桃から生まれた鬼
介裕
第1話
山へ芝刈りに行ったおじいさんは、川で洗濯をしていたおばあさんからのメッセージアプリで慌てて家に帰りました。
田舎にも届くようになった電波のおかげで、伝達速度は飛躍的に上がったのです。
家に帰ったおじいさんは、おばあさんが川で拾った大きな桃を見て大層驚いたようです。
「これ、どう考えても食べきれんぞ」
「どうしましょうねえ……」
途方に暮れたおばあさんは、切り分けて冷凍庫に保存しようと思い、包丁を入れました。
すると中から可愛らしい赤ん坊が、元気な泣き声と共に現れたではありませんか。
おじいさんとおばあさんは長い不妊治療の末に子供を諦めた夫婦だったため、それはそれは大喜びで桃太郎を養子にすることにしました。
すくすくと成長する桃太郎は、学業や運動で好成績を収め、その精神性も高く評価されたことで返還不要の奨学金が認定されることとなりました。
しかし、おじいさんとおばあさんが高齢になったことで、親元を離れて遠い地域へ出ることに悩みます。
そんなとき、鬼ヶ島という地域で人々が暴徒化し、通称鬼と呼ばれたチームを結成してしまったのです。
そこで時の政府は、その鬼ヶ島の暴徒を鎮圧した者に多大な報奨金を与える事を決めました。
桃太郎はおじいさんとおばあさんに穏やかな老後を過ごしてもらうため、鬼ヶ島へ向かうことを決意します。
二人は最後まで危険だと反対していましたが、政府の適性検査を通過した桃太郎は、鬼退治に向かうことを決めます。
出発の日におばあさんが昔やっていたというマッチングアプリ『kibidango』をインストールしてもらい、鬼ヶ島へと向かいました。
鬼ヶ島へのフェリーに乗る際に、怪我や死亡の恐れがあることを宣誓書で確認された後、kibidangoで知り合った犬塚、まさる、フェザントの三人が心強い味方となってくれました。
鬼ヶ島では鬼の殲滅が始まっており、襲いかかってくる暴徒に対して桃太郎たちも警棒やバット、ガスガンなどで応戦しました。
鎮圧は政府側、つまり桃太郎のような適性者も多くの犠牲を払いましたが、桃太郎自身は家に帰ることが出来ました。
仲間になった三人は死ななかったものの、体のいずれかをが犠牲になってしまったので、今後を案じながらも報奨金を手に桃太郎は家に帰ります。
しかし、家で待っていたのは、おじいさんとおばあさんの亡骸でした。
暴徒側に事前に適正者のリストが渡っており、その情報を元に報復が成された後でした.
悲しみに震える桃太郎は、おじいさんの芝刈り用の鎌を手に、再び鬼退治へと向かいました。
一人の生き残りも許さない。
次々と逃げ延びた暴徒を探し出し始末していきました。
そんな桃太郎の姿を、人々は鬼と恐れたそうです。
桃から生まれた鬼 介裕 @nebusyoku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます