第4話

 懐かしいなぁ、と目蓋を閉じながら、しみじみとしていると『にゃあ』と言う子猫の声が聞こえた。


 そうだよ、なにを昔の事を思い出しているんだ。もし、ギルド長になんて見られたら、げんこつが飛んでくる。

 そういえば、ギルド長もこんな気持ちで1人いる俺を見つけたのかなぁ。

 ……いや、違うか。俺は可愛げがなかったし、盗みばっかしてたから。


『みゃあ……みゃぁ…………』

 それに比べて、お前は可愛いなぁ。


 どうしよう。


 ギルド長だったらどうするのだろうか。

 見捨てることは、まず無いだろう。

 だからといって、俺はこいつに何をしてやれる?


『……まずは、相手をよく見ろ。そうすれば、相手の特徴がよく分かる。なにをすればよいか直ぐに分かるはずだ』


 これは、初めてモンスターを狩りに行く時……、ギルド長が俺を送り出す時に言った言葉だ。


 相手を、よく、見る……。

 確かに、俺はこいつの事をしっかりと見ていなかった。


 3色の毛並み、赤茶の瞳。暗いためか瞳孔が大きく開いている。

 毛並みに艶がなく、目に見える程痩せ細っている様子から、捨てられてから相当な時間が経っているのことが窺える。


 今、こいつに必要なのは食べ物だな。どう調達してこようか。


 その前にここは何処だ?


 

───にゃぁ……。


 まずは、そこから調べないとな。

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吾輩は猫である。~転生猫族冒険者は現代を狡猾に生きる~ 十六夜 水明 @chinoki

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