西蔵 絹の道 仏─日本人の琴線に触れる壮大な羈旅浪漫

大唐の時代を舞台に、遣唐使の任を捨てた東方の日本人と、出来損ないの翼が生えた迦陵嚬伽の少女の共連れが、遥か西方の地を目指して旅を続ける物語。

物語の随所に織り込まれた豊かな仏教の知識と、仏教国チベットの雄大な光景、そして繁栄を極めたシルクロードの残影が、細密かつ端正な記述によって描き出される。

かつての日本人が憧れた唐土や、阿弥陀仏の座す西方浄土への思いを想起させる見事な小説、今後の展開に期待大。ぜひ一度読んでみてほしい。