衝撃の緊急ニュース!!!

立花 優

第1話 衝撃の緊急ニュース

令和○年、日本は、強盗殺人事件の発生が、何と一月に千件を軽く超えるようになっていた。




 実際に、事件に巻き込まれ殺される人間も、一月に軽く、五百人を超えるようになった。




 警察も必死に取り締まるが、続々と模倣犯や、そのグループが、SNS上の闇バイトで、集められる。まるで、イタチごっこのような状態なのだ。




 狙われるのは、主に、高齢者ばかりだ。




 酷い手口になると、ドアや窓ガラスを、叩き割り、即、住宅に侵入。で、ナイフで脅して現金のありかを聞き出すと、証拠隠滅のために、高齢者の頭蓋骨をハンマーで即、撲殺。




 契約してある警備会社が急いで駆け付けた時には、時、既に遅し。




 犯人らはレンタカーなどを使わずに、盗難車を使う。


 なので誰が犯人なのかも分からない。防犯カメラがあっても、覆面をして手袋をしており、どうも靴もワザと靴のサイズを変えているようであり、「インソール」で身長もごまかしているように見える。


 それは歩き方がぎこち無い事から簡単に推測されたのだ。




 こうなると、一国の総理大臣の政治責任が最終的に、追求されるのだ。




 しかし、これほど、凶悪犯罪が多発しては、政府といえども、どうにもならない。




◆ ◆ ◆




 しかし、ここで、総理の親戚から抜擢された某主席補佐官が、とっておきの策を、総理に伝授したのだ。




 既に、内閣支持率は、10%を切っていた。このままでは、総辞職しかない。




 総理には、もはや、選択肢は全く無かったのである。




◆ ◆ ◆




 その年の12月1日の、午後7時、全テレビ局で、一斉に緊急ニュースが流れた。




 それは、日本人の今まで、誰も見た事の無い内容だったのだ。




 何と、刑務所から強制的に引きずり出される男性囚人の姿では無いのか?




 ほとんどの国民が息を潜めて画面を見ていると、その男性囚人は、数十人の刑務官に、無理矢理歩かされて、絞首台の上に連れて行かれたのだった。


 テレビに流れるテロップでは、この死刑囚はかって高齢者を狙った、強盗殺人で4人を撲殺し、死刑判決を受けていたと言う説明があった。死刑囚の名は、「立花 優」と紹介された。




 何と、困った事に、この作者の私と、同姓同名だ。




 目隠しも無く、口にテープも貼っていないので、「死」を目前にした死刑囚の狂気に満ちた苦悶の表情が、テレビに大きくUPされた。




「死にたくねえ……。死にたくねえ……。死にたくねえ……。誰か、この刑の執行をやめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ……」




 だが、画面が急に左右2画面に分離し、3人の死刑執行官が、同時にボタンを押す場面が流れた。




 と、同時に、ガタンと踏み板が外れた場面も同時に映った。




 死刑囚は、ガクンと下に落下し、ベロンと舌を出した。


 更に、極めつけは、失禁して小便や大便を垂れ流している場面も、別のカメラで確実に放送されたのだ。




 何と、「死刑囚の死刑執行場面」の、実況中継だったでは無いか!!!




 確かに、強盗殺人罪の量刑は、「死刑又は無期懲役」しか無いのである。




 この衝撃の場面を、国民は見た。いや、強制的に見させられたのだ……。




 頭の悪い当該総理の思惑では、これによって、強盗殺人が、急激に減る筈だった。




◆ ◆ ◆




 しかし、ここで、不思議な事が起こったのだ。今まで、個々バラバラで活動していた強盗犯人らが、SNS上で、結託し始めた。




 その結果、一大、秘密結社となった。




 また、この「死刑囚の死刑執行場面」の実況生中継は、世界中からも人権無視として、猛烈に批判された。




 この世界中の猛非難を背景に、その実況生中継を命令した当該総理は、国会へ向かう途中、大型トラックの故意的な信号無視の突進により、無惨に事故死した。




 実にあっけない最後だった。




◆ ◆ ◆




 遂に、警察庁は、指定暴力団に、強盗団の絶滅を依頼する事になってしまった。




「毒を食らわば、皿まで」で、あったのだろう。




 警視庁を初め、各県警の捜査4課の職員らが、急激に動き出した。




 既に、警視庁のサイバー犯罪対策課が、その一大秘密結社の闇名簿を既に作成していた。これを、指定暴力団に裏でコッソリ流したのだ。




 こうして、素人や闇バイト達で構成されていた、強盗殺人犯の各々のグループは、日本から、完全に駆逐された。つまり、全員、秘密裏に殺害されたのである。




◆ ◆ ◆




 だが、翌年の3月1日の、午後7時、全テレビ局で、再び、一斉に緊急ニュースが流れた。




 しかし、そこに現れたのは、あの、世界的ハッカー集団のアニサキスであった。




 明らかに、この前と違う絞首台に首を括られていたのは、何と指定暴力団に極秘で、強盗犯の殺害を依頼した、現警察庁長官だったのだ!!!




 アニサキスは、この流れの真実を全て、知っていたのである……。




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