第8話 討伐
「ば、馬鹿な馬鹿な馬鹿な! いくらドラゴンのように魔法障壁が無いとはいえ、弓や魔法でも簡単には傷すらつかない外皮ごと真っ二つだと! それに、聞こえていたぞ貴様らがGランクだと。はっ、まさか、ゴールドランクのGか。くそっ、人間どもはいつの間にランクの制度を変えやがった。これは一度報告に戻らねば」
ドラグルは、一人で完結するとドラゴンをUターンさせる。
「逃がすわけ無いでしょ、せっかくの私の見せ場なんだから!」
「弓で撃ち落すつもりか? その距離でドラゴンの魔法障壁を破れるものか。君、さっきの魔法をもう一度撃てないか?」
兵士長は、マオの実力を認め、魔法で攻撃するように頼む。
「いや、活躍の場を奪うと後で怖い。ここはエリザに任せておけばよいぞ」
しかし、マオは楽しみを奪われたときのエリザの態度が怖いため、やりたいようにやらせる。兵士長は、去り行くドラグルの背中を見ているしかない。
「シューティング・スター!」
特に魔法ではないが、エリザは必殺技名を叫ぶ。馬鹿げた力で引かれた矢は、音速を越えてドラグルに迫る。ドラグルは、ドラゴンの魔法障壁を信頼していたため、後ろを気にしていなかった。そして、エリザの矢はドラゴンの魔法障壁を貫き、ドラグルの頭部を射抜いた。矢は、その威力をまだ残していたため、ドラグルの死体と共に遠くへと飛んで行った。
「で、そこのドラゴンちゃん。食べられたくなかったら私のペットにならない?」
ブラックドラゴンは、悪寒を感じて振り返る。声は聞こえていないが、このまま逃げたらあの矢がまた飛んでくると思い、慌てて戻ってドラゴン風の土下座をする。全身を地面に着け、平伏した。
「いい子いい子。乗り物ゲットだぜ! いやー、早い段階で飛行船みたいな移動手段が手に入ってラッキーだね。大抵は、冒険の終盤にしか手に入らないのに」
「……自力で飛べるだろうに。それに、まだ魔物の群れ本体が到着していないだろう?」
エリザは、ブラックドラゴンの頭を撫でている。そして、あまりのことに放心していた兵士長は、時間が経って正気を戻した。
「はっ、そうだ! 皆のもの、引き続き門の前にバリケードを作るのだ! 土魔法を使えるものは城壁の修理と障害の設置を急げ!」
兵士長は、いまだに状況を理解できていない冒険者達に命令を飛ばす。そして、エリザとマオの方へと向きなおす。
「君たちは、何か特別な力を持っているようだ。そのドラゴンを従えた事と言い、あっさりと四天王の一人を倒した事と言い。どうか、この後に来るであろう魔物の群れの討伐にも力を貸してもらえないだろうか?」
「もちろんいいわよ。ただ、ランクアップと報酬は貰わないとね!」
「ああ、私に出来る限りの事をしよう」
兵士長は、当然ギルドに対して権限など無い。しかし、ワイバーンの討伐、四天王の討伐、ドラゴンのテイムを報告すれば、エリザの希望に沿える結果を引き出せると確信していた。
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