第7話 四天王ドラグル

門はギルドから近いため、2人はすぐに着くことが出来た。そして、話を聞いた冒険者や傭兵、兵士などが集まってくる。その中で、位が少し高い兵士、兵士長が代表してこの場に居る人達に大声で話す。


「聞いてくれ。皆も聞いたと思うが、もうすぐここへ魔物の群れが来るらしい。我々は、その魔物をこの街へと入れないように防ぐのが役目だ。数は多いと聞く。まずは、弓や魔法が使える者たちで数を減らし、ある程度減った段階で門を開けて、近接が得意な者達で対処しようと思う。それまでは、近接職も門の上からバリスタや投石などで対処してくれ。それでは、いくつかのグループへと分ける」


兵士長がテキパキとグループを分けた。1グループあたり10人程度で分けられた。その中で、兵士が班長として割り当てられている。冒険者でパーティを組んでいる場合は、そのパーティとしてグループを組んでいたりもする。


「よし、それでは説明した通り持ち場に――」


兵士長が合図を出す前に、閉じていた門が爆発した。煙が晴れた後には、門には大きな穴が開いていた。


「な、何が起きた!」


兵士長は、急いで確認に行く。門の外には、黒いドラゴンに乗った黒い鎧の男が居た。そして、男から拡声器を使ったような大声が響いた。


「ぐわっはっは、俺様は魔王様の四天王の一人、ドラグル様だ! 勇者との話し合いで、世界の半分は俺達魔族のものとなる事が決まった。さっそく、その半分を支配しに来てやったぞ!」

「何だと! まさか、勇者様がそんな事を……」

「あん? 疑うなら自分で確認しに行きな。生きていたらの話だがよ」


ドラグルは、持っていた槍を、兵士長の近くの城壁に向かって投げつける。すると、先ほど門が爆発したのと同様に、城壁が大きく損壊した。そして、槍はまたドラグルの手元へと戻っていった。


「くそっ、魔道武器だと! 遠距離攻撃出来る者たちは居るか! 弓でも魔法でもいい。奴は一人だ、倒せるはずだ。手の空いたものは、崩れた城壁で門の穴を埋めるのだ!」


兵士長は、四天王にも恐れずにテキパキと命令を下す。有能である。そして、その命令に従った冒険者達から矢と魔法が飛ぶ。しかし、ドラグルの乗っているドラゴンの魔法障壁で攻撃が通る事は無かった。


「ぐわっはっは、その程度の攻撃が通用する訳が無いだろう。もうすぐ、足の遅い配下達もやってくるが、一足先に暴れてやれ、ワイバーン」

「ぎゃおおおお!」


近くの茂みに隠れていたのか、ワイバーンが1体飛び出した。ワイバーンはドラゴンほどでは無いが表皮が硬く、狂暴で肉食だ。冒険者で言えば、Bランク程度の強さがある。当然、この街にもBランクやAランクの冒険者は居るが、丁度朝一でクエストに出ているためこの場には居なかった。寄せ集めの冒険者や傭兵の中で一番ランクが高いのはCランクパーティのザジだった。しかし、ザジのパーティは全員近接職なので、ワイバーンには対抗できない。


「これは、出番ね」

「君は……?」

「エリザよ。この場は、私とマオで対応するわ」

「そうか、見たことは無いがBランクなのか?」


兵士長は、エリザの装備を見てそう判断する。年は若そうだが、年に見合わない度胸と、見た事もない弓からそう判断した。


「いえ、Gランクよ」

「Gランク……」


兵士長は、見た目だけか……と、早くも諦めた。しかも、こちらの状況を加味せずにワイバーンは襲ってくる。


「ぎゃおおおお!」

「危ない!」


兵士長は、せめて自分が盾にならないとと思い、エリザとマオの前に出てワイバーンの攻撃を防ごうとする。しかし、まともに受ければいくら鎧を着ている兵士と言えども即死するくらいにはワイバーンの突進は強い。


「エア・カッター」


マオは、その兵士長の後ろからワイバーンに向かって風の刃を飛ばす。ワイバーンは、目に見えにくい風の刃をまともに受け、真っ二つとなって落下してくる。


「は?」


兵士長の左右を真っ二つになったワイバーンが通り抜け、ズズンと地面に穴を開けた。


「やるわね、マオ。じゃあ、私はあっちの方を相手しようかしら」


エリザは、あっさりとワイバーンがやられて放心気味のドラグルの方を向いた。

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