第伍拾肆話:全校集会3

「ぐ・・・使えぬ駄猫め。おい!伊吹君!!君には不審者対策で校門の施錠を任せたはずだぞ?!」


「私の子供を人質に取り、自分に有利な発言や行動をする警官だけを入れるあなたの命令を聞くのはもうごめんですね。」


まさか、伊吹先生の子供も質に取っていたとは・・・どこまで落ちれば気が済むんだこの爺さんは・・・。もやは怒りを通り越して呆れてくる。


「なっ!ナニィ!?」


「パパ―!」


後ろから声がしたかと思うと伊吹先生と同じ角を生やした花柄の和服姿の少女が先生のもとへ走って行った。


「狂香!無事だったかい?」


「うん!」


狂香と呼ばれた女の子は先生に顔をこすりつけた後に眉を吊り上げて教頭先生を指さした。


「あいつ、私を誘拐した悪い奴!!あのお巡りさんは見張り役だった!!」


当然生徒たちは口々に罵倒した。やはり教頭先生に対して思うとこはあるのだろう。


そして、一番怒っていたのは言わずもがな娘を人質に取られていたのは伊吹先生だった。


「布田月ィイイ!!」


「はっ、はひぃ!」


ここまで伊吹先生が怒ったのは初めてで思わず俺も生徒も震え上がった。


だが、伊吹先生は至近距離まで詰め寄った後に深呼吸をして頭突きを一発だけかました。


「っつー!」


教頭先生は頭を押さえてしゃがみこんだ。


「ここで、感情に任せてあなたを殺すと子供たちに示しがつきません。できるならば、原型をとどめないほどにぐちゃぐちゃにしてやりたいのですが。これで、勘弁してあげます!」


「伊吹さん、よく我慢しました。後は警察の方々に任せましょう。」


「そうですね。校長先生。」


往生際が悪い布田月は隙をついて逃げようとした。


「まずい!『とまれ!』」


「ぐあっ!か、体が動かん!!」


ちなみに釜瀬と言う男も何をするかわからないので一緒にそこにとどまってもらうことにした。


「こ、こんな子供がこんな能力を!なぜ教えてくれなかったのです。教頭先生!!」


「うるさい!奴がそこまで力を付けているなど誰が想像できるというのかね?」


その後、御剣さんの突撃の合図で警察が校門からなだれ込んできた。


「なっ!おい、釜瀬。見張りの警官はどうした?」


「全員、捕まえたぞ。」


そう言いながら真紀ちゃんのお父さんが俺のそばまで歩いてきた。


「なんだとぉ!?」


「うーん・・・あっ、悟君!お父さん!!」


真紀ちゃんはようやく意識が回復して立ち上がり俺と真紀ちゃんのお父さんを見るなり駆け寄って来た。


可愛いなと思いながらふと横を見ると、鼻の下を伸ばした真紀ちゃんのお父さんが視界に入った。


「な、何かね悟君?」


「いえ、別に。真紀ちゃんは可愛いですねって思っただけです。」


「ふふん!そうだろう。器量よし愛想よしの私自慢の娘だ!まあ、君になら貰われても私は一切文句を言わんぞ?」


「さいですか・・・ふぇ?!」


「お、お父さんそれって・・・。」


「まあ、まだ二人とも未成年だしじっくり考えなさい。」


思わず真紀ちゃんも俺も顔が真っ赤になった。


まさか、真紀ちゃんのお父さんからもらう宣言してないにも関わらずOKが出るなんて夢にも思わなかったよ。


「さ、悟君?こんな場面で言うのもなんだけども、あの・・・未来でもずっと一緒にいようね!」


「うん!約束だよ真紀ちゃん!!」


「悟君。」


「御剣さん。どうしたの?」


「私も・・・その。悟君のことを思うとすごくドキドキしてしまうんだ。」


おっと・・・。


「それに、悟君には責任を取ってもらう必要がある。」


「え?」


明後日の方を向きながら御剣さんは頬を染めた。


「さっき、私のパンツ見たでしょ?」


バレテーラ!!


「なんだそんなことか御剣君。」


真紀ちゃんのお父さんがそうつぶやくと、何かを察したのか真紀ちゃんは必死で自分の父親を止めようとした。


その直後、俺も勘づき必死で止めたが無駄だった。


「この二人はな!小さい頃、背中を洗いあった中なんだぞ?まあ、側室ぐらいだったら許してやろう!」


「せ、背中を・・・それならしょうがありませんね。」


クラスメイト達の視線が熱い物から一気に冷ややかなものになった。


何してくれとんじゃ糞ジジイ!!


そうこうしているうちに、捕まった布田月と釜瀬は互いに責任を押し付けあいながら警護車に無理やり乗せられていった。


「これで一件落着ですね。」


「とりあえずな。警察が大変なのはむしろこれからだ。もしかしたら真紀ちゃんには寂しい思いをしてしまうかもしれないが・・・。」


「ううん、私は平気よ!お仕事頑張ってねお父さん!!」


真紀ちゃんのお父さんは感極まって生徒がその場にいるのに男泣きした。


「お、お父さんたらもー!恥ずかしいから泣かないで?!」


俺や生徒たち、先生はそろって笑った。


こうしてひと悶着あった物の全校集会は無事お開きとなった。


第2の人生において一番の懸念材料だった布田月家は壊滅した。


これからはたぶん強敵に悩まされることなく第2の人生を歩めそうだ!!


俺の人生はこれからだ!

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マジカルエンパイア ~チート能力てんこ盛りで同一人物に転生した俺は、第二次世界大戦に勝利し、世界最強の魔導技術大国と化した日本で最強冒険者を目指して無双する。~ 小林ミメト @mimeto

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