第伍拾参話:全校集会2
俺から放たれた光の弓矢は見事真紀ちゃんに命中した。
「ギャー!!!」
断末魔のような悲鳴を上げながら真紀ちゃんは倒れた。
当然周りは俺のことを非難した。
だが、それも想定済みだ。
「落ち着いてくれ皆!!あれは真紀ちゃんであって真紀ちゃんじゃないんだ。それに授業で習った奴は知ってるだろ?あれは妖魔にしか聞かないって!」
七海先生は頷いた。
「そうだ。よく覚えていたな古明地君。みんなは憶えていたよな?」
七海先生の言葉に皆も頷いた。
「たしかにあれは、何かに憑りつかれていた場合も有効だと・・・まさか!?」
「そのまさかだ岩原、お前が今まで付き合ってきた布田月家はみんなのアイドルを得体のしれない妖魔に憑りつかせるほどの極悪な連中なんだ。」
その言葉とほぼ同時に黒い靄と化した金華猫が真紀ちゃんの体から飛び出した。
校庭が絶叫に包まれる中、金色に光る猫の目玉が一つだけ黒い靄の上中心部分でぎょろりとこちらを向いた。
「よくも・・・よくもやってくれたな小僧!食い殺してやる!!」
もはや殺意を隠す気すらなくなった金華猫は、鋭い牙を生やした大きな口を開けてものすごいスピードで襲ってきた。
「『平伏せ!!!』」
金華猫は勢いよく地面に叩きつけられ強制的に平服させられた。
「な、なんだと・・・体が動かん!?これはぬらりひょんの固有魔技だったはず・・・。貴様、まさかぬらりひょんを倒したとでも言うのかっ!!」
「そんな馬鹿な?!一級冒険者が束になってやっと倒せる強さを持っているのだぞ!?」
「そうだ。ちなみに僕は鵺や牛鬼も倒しているから魔力は君よりはるかに上だよ?」
俺の発言でざわめきは一段と大きくなった。
「ち、ちくしょー・・・。」
「教頭先生、もうなりふり構ってられません!」
「そうだな釜瀬君、こやつは危険な存在だ。みんなのためにも始末せねば!!」
どこまで白々しいんだこの爺さんは・・・だがこれも想定済みだ。
2人が銃を構えた次の瞬間、後ろから風が吹いてその風が土煙を起こしたかと思うと、構えた銃が真っ二つに切れた。
煙が晴れるとそこにいたのはスカートや髪を舞い上がらせた御剣さんだった。
ちなみに何がとは言わないが彼女の心を表すかのような純白だった。
「御剣椿!なぜ貴様がここにいる?!というかどうやって入って来た?」
「門が開いていたから入っただけ、それに全校集会の警護を任された警察組織の一員である私が一般市民を守るのは当然の権利。」
なんでこっちを向いて笑顔で頬を赤らめる!?俺顔に何かついているのか?
「悟君、忘れものだよ!」
そう言って御剣さんは校則で学校には持ち込めなかった俺の剣を投げて渡してくれた。
「ありがとう!・・・あれ、御剣さんってこの剣普通に触れたんだね。」
「え?」
「あ、いやなんでもないよ。」
俺は鞘を抜いて平伏している金華猫の弱点の赤い点に向かって剣をふるった。
もちろん、この点は俺以外には見えていない・・・はず。
「や、やめろ!わかった!!降参する、君の使い魔になってやるから命だけは!!」
「僕の大切な人に嬉々として憑りついた奴を使い魔にするほど僕は寛容じゃないよ。」
ザシュ!!
「ぎにゃー!!!!!」
尻尾を踏まれた猫のような叫び声を上げながら金華猫は消滅した。
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