第7話 先行き不透明

 オショック・セイをオトモダチにし、握手を交わす。


「これからどうするんです?」

「知名度を上げて、私たちを金銭面で支援してくれる方々を探します」

「それなら良い案があるんです!」


 俺は聞き耳を立てた。聞く力を発揮するなら今しかない。


「美味しいお食事付きのパーティ券を大量に売り捌くんですよ」

「費用が高くならないですか?」


 俺は聞き返した。心配なのは、パーティ券が売れ残ることではなく、ポケットマネーが減るということだ。


「大規模にやったらそうなると俺も思います」

「ならどうすれば」

「最初は小規模なパーティにして、少しずつ規模を大きくしましょう」

「それは妙案ですね。パーティはどこで行いましょうか?」


 俺はさりげなく、オショック・セイに助けを求めた。頼む、この異世界のどんな場所がパーティに適してるか教えてくれ。


「う~ん。食事できる料理店を貸し切るのは?」

「無しですね。プライバシーを守ることが出来ませんので」

「なら、協調王国の所有する空き部屋を、一時的に借りましょう」

「それも避けたいですね。毎回同じ場所が良いです」


 何か他にはありませんか。そう続きを言いかけたところで、俺は端と気づいた。スキル『検討士』が持つ『検討加速』は、検討の速度さえも調整できる。これをオショック・セイに使って、どうにかならないか。


「『検討加速』せよ」


 俺は、オショック・セイに少し遅めの検討加速をかけた。


「お城を検討」

「無し」

「立ち食いイートインの検討」

「そんなんじゃダメです。建物や土地自体を買うことは出来ないんですか?」


 俺が言うと、オショック・セイは驚いた。


「買うって、そこまでのお金ないじゃないですか?」

「ああ、そうでした」

「ちゃんと考えてから発言してください」


 俺は考えた。金を集めるには、金を使わなければいけない。しかし俺は、自分のポケットマネーを減らしたくはない。だからといって、オショック・セイに金をくれと言っても断られる。俺は、検討に検討を重ね、さらには検討を最大限に加速させた。どうすればいい。どうすれば。どんなに検討しても、俺が描く未来は、先行き不透明だった。

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最弱チート『検討士』 刻堂元記 @wolfstandard

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