第6話 オトモダチづくり

「適切な対応だと?なってねえじゃねえか!」

「ではこれをどうぞ」

「は?」


 なにいってんだこいつと言わんばかりの顔で、男性が、俺の出した金に目を向ける。どうやら俺の意図が分かってないらしい。


「見ればわかるじゃないですか。お金ですよ、お金」

「だからそれを返せって言って」

「『検討加速』せよ」


 その瞬間、男性が頭を抱えながら、何かをぶつぶつと言い始める。きっと検討の良さを頭の中で心ゆくまで味わっているに違いない。俺が邪魔するのも変だろう。俺は、男性が満足するまで何もせずに立っていることにした。


「金を、検討を返せ、検討せよ、検討させろ、検討させてくれ……」


 見れば男性は、膝から崩れ落ちている。検討の素晴らしさに感動するあまり、身体から力が抜けてしまったのだろう。俺はそんな男性のため、手を差し伸べた。


「ほら立ってください」

「あ?ああ……、ありがとうございます」

「ここで出会ったのも何かの縁ですし、オトモダチにならないですか?」

「オトモダチに?」


 男性が何も分かっていないという顔で、俺を見る。そうだよ、オトモダチだよ。良い思いいっぱいさせてやるぜ?


「そうです。貴方を、世界を救う私の仲間として迎え入れたい」

「それはどうして?」

「私だけでは世界を救えないのです。そのために、まずは貴方を雇わせてほしい」

「それなら有難く検討……」

「こんな機会めったにないですよ。まずはこのお金を。そうすればこれからも、美味しい思い、いっぱいさせてあげますから」


 すると、男性が目を輝かせながら、お金を受け取った。やはりお金の力は侮れない。俺はオトモダチになった男性と握手を交わし、親睦を深めるきっかけとして、男性の名前を尋ねた。


「そういえば、貴方の名前は?」

「俺はオショック・セイ。貴方こそお名前は?」

「私はゼイーダ・ゾーゼイ。これからよろしくお願いします」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る