白銀の聖女と騎士隊長の初恋

ワシュウ

第1話 騎士隊の初恋

私はアルラシード王国 王国軍第三騎士隊隊長

アブドゥル・アルラフマーン


第一・第二騎士隊が貴族の出なら、我々第三隊は農民平民の寄せ集めだ


私の祖父の代に没落して、当時の母が金目の物を持ち出し、馬丁だった父と駆け落ちして出来たのが私だ。

普通に暮らすには、母はあまりにも無知で愚かだった。

働き先ならいくらでもあるのに、没落した貴族の娘は娼婦と相場が決まっていると思い込み、場末の酒場で男を漁り小銭を稼ぐようになった。

父は必死に働き、金を稼ぐが母はやめなかった。

父も母も若くして病でこの世を去り、残された私は孤児になるところ、子どもが出来なかった母の旧友が引き取って養子にしてくれた。


一度だけ、酒によった養父が自分は母の元婚約者だったと

「お前はその母に容姿が似ていたからお前を引き取ったんだ」そう冗談でも言うように笑っていた。

馬丁だった父親に似ていたら、今もあの酒場の裏にいたのかもしれない。

養母は優しい人だったが、振り向いてくれない夫を持つ寂しくて可哀想な人だった。


何となく気まずくなり、私は家を早く出たくて、王都の騎士試験を受けた。

身元がしっかりしていて、体が大きくて体力があったから受かった。


養父の家格がそんなに低いわけでもないのに、私は平民の養子だと罵られ嫌がらせやイジメが多かった。

同じ平民から養子になった騎士仲間が出来ると嫌がらせが減った。


ある日、自主練から帰ると宿舎の私の部屋にその仲間が裸に剥かれボロボロになって縛られていた。

駆け寄り、生死を確認すると、後ろから衛兵がやってきて冤罪をかけられ捕らえられた。


減った嫌がらせは、その彼に来ていたのだ。

私はそのことに気が付かず、彼の生傷を鈍臭いと笑っていたのだ。取り調べで彼の体がボロボロだった事を初めて知った。


私の冤罪はすぐに解けた。直前まで偉い人が稽古に付き合ってくれたからだ。

そして、私を冤罪にかけた奴らと、大して調べもせずに牢屋にぶち込んだ奴らがまとめて消えていた。


「権力がすべてだ。

僕は平民のまま死んでいくんだよ。君は没落しても貴族の母から生まれたのだろ?僕らと違って。

君に話しかけなければ良かった。

そしたら、今頃まだ・・・フッ

君は最後まで戦って、そして僕らの為に死んでくれ」


そう言って寂しそうに笑って元騎士仲間は王都から去っていった。

何も知らなくて、何も出来ない自分が死ぬほど恥ずかしかった。

何も考えたくなかった、だから目の前の事に打ち込んて打ち込んで考えないようにしていた。

少しでも余裕があれば余計な事を考えてしまう、限界を超えるまで毎日体を鍛えていた。


気がついたら、元より大きかった体が更に大きくなり、見習いの中で私に勝てるやつがいなくなり、ついでに話しかけてくるやつもいなくなった。


体格と見目が良いと言う理由で、城の祭典の王族周辺の警備に回された。

母と歳が変わらない、隣国からきた王妃様は私の体をおきにめしたようだった。

まだ見習いだというのに、城の騎士団に配属された。

見た目が老けて見えたのも災いした。

みんなからは10も年上に見られていたようだった。


大した用もないのに、王妃さまの部屋に呼ばれ、そこで服を脱がされた。

当時の私はまだ13歳だ、母と同年代の人に立つわけがない。

そう告げると王妃さまは興醒めし、裸にむいたまま毎日何時間も立たされた。

次の日には、もう一人裸で横に並び

その次の日はさらにもう一人

その更に次の日と続いて裸の男が5人まで増えた。


そんな王妃さまの戯れも、終わりを迎える。

突然部屋に王弟殿下があらわれ、すべてが露見した。

私達の萎えたものを見て、過ちは無かったと思われたが5人のうちの一人が王妃さまと一夜を過ごしていた事が発覚した。


怒った王様に全員拷問にかけられた。自分は無実だ、そう何度も訴えた。

一人、拷問に耐えきれずヤりましたと嘘を吐いてしまった。

「騎士の恥だ!嘘をつくくらいなら死ね!」

私はそう叫んで、軽蔑の目を向けた。

そこから、拷問が過剰になり私より見目が良い男が、私の目の前で拷問に苦しんで死んでしまった。次は私の番だ、とても恐怖だった。

片目を潰され二度と子を成せない体にされ、もう駄目だと思った時に助け出された。


この時も私の冤罪は解けた。

夜しか鍛錬する時間が無かったから、たまに偉い人に遅くまで稽古をつけてもらっていたのだ。


「もっと、早く知っていたらこんな拷問もされずにすんだのにすまない。気付いてやれなかった」

そう言って私の肩を起こしてくれた。

この人が発言権のある偉い人でよかった。


私は、その偉い人の騎士隊に所属する事になった。

国軍の第三騎士隊だ。

最初の一年は、他の奴らに舐められ、王妃に裸で部屋に飾られてたことを笑われたが

実力派の第三騎士隊で、鍛錬を続けていたら私を舐めるやつも少なくなった。


王様の気まぐれで剣術大会が開催され、コロッセオで開かれるメンバーに栄誉にも私の名前があった。

先輩騎士に胸をお借りして、無事に終えた。

私は準優勝だったのだ。

使っていた剣が試合中に折れてしまった、私の剣は騎士隊の支給品のボロで金持ちの凄い剣にはかなわなかったからだ。

「剣が良かったら勝てたかもしれないな」

そう囁かれ、みんなに認めてもらった気がした。


私が入隊してから7年が経ち、メンバーの半分以上が入れ替わり、いつの間にか中堅どころになっていた。


「私も、田舎でのんびり暮らしたい。隣国に妻の親戚がいるんだ。ここより豊かなところなんだよ」

父のように慕い、とてもお世話になった敬愛する隊長が私を後釜に引退した。


私が隊長になって、初めて知った

私宛の手紙が何枚も隠されていたのだ


そこに養父からの手紙があった…

妻と離縁した、お前の籍はそのままにしてあるから好きに生きなさい

私は良い父親にはなれなかった

いつか、お前に酔って言った事を気にしてるようならそれは間違いだ

照れ隠しのつもりだったのだ

お前は私の本当の息子だった

あの時、お前の母はすでにお前を身籠っていたのだ、私が助ける前に、私を待てずに逃げ出したから、探すのに時間がかかってしまった

お前は自由だ

広い世界をみてまわってからでも遅くない

好きに生きよ


父からの最後の手紙には

何年も前に開催された、準優勝を飾った私の姿を褒めていたものだった

「剣が良かったら勝てたかもしれないな」

あれは、父の言葉だったのだ

あの時、隊長から言われて誇らしく思っていたのに急に薄っぺらくなってしまった


元先輩の副隊長が教えてくれた、私をひきとめるために見せなかった手紙だと。

当時の隊長が捨てたのをわざわざ拾って隠していたのだ。


その元先輩が教えてくれた


「お前が拷問されていた時、あの時に"嘘をつくくらいなら死ね"その言葉が重くのしかかり

最期まで嘘をつくことなく、拷問に耐えて死んだ男は俺の兄だ!

あの隊長がお前に恩を売るためにわざと助けを遅らせたんだよ!

毎日稽古してる人間がいなくなればすぐにわかるだろ?

結局、最初に音を上げたやつも助かったんだよ。

俺の兄以外はみんな生きてる・・・。

剣術大会でお前の剣が折れたのは、隊長がボロを渡していたからだ、お前は強すぎたんだ…

お前は気づかず最後までよく戦ったよ。

虚像に縋り付いて憐れだな」


その元先輩の副隊長も退職していなくなった。


農民平民の混じるこの第三騎士隊は、名ばかりで汚い仕事をたくさんさせられた。

私は何も知らなかった。

徴税官と共に向かい毎年上がる税を払えない民から搾り取っていたのも

同僚の騎士を捕えて拷問をしていたのもすべて第三隊の仕事だった。

必要悪、そんな言葉を知った。民の怒りや不満をむけさせるためと


大凶作に見舞われて、寒村では恐ろしい疫病が流行り邪教徒が蔓延り、この世の地獄となっていた。

「疫病が王都に入る前に焼き防げ」

王の命令は絶対だ。


隣国から流れて来たのだろう、苦労を知らない白い肌の、悪のおぞましい教祖が民の金を搾り取っていると言うのに、必要悪だと領主がその邪教に取り込まれている。

私は、また何も出来ないのか?


「君は最後まで戦って、僕らの為に死んでくれ」

いつか友に言われた言葉が浮かんできた。

寒村を周り国に言われた通り焼いていく、病に倒れありもしない虚像に縋り付いて憐れだ

逃がせる子どもは逃してきた。憐れな民を救い良いことをしてると自分の心を保つためだ。

その憐れな民にとどめを刺しているのは私なのに。

私は何をしているのだ、どこで間違ったのだろうか。

母が馬丁と逃げていなければ?

父に拾われ養子にならなければ?

騎士を目指すなどせず家を出なければ?

拷問に耐えずに嘘をついていれば?

第三騎士隊に入らなければ?


流されるままに来て行き着いてしまった

無い頭で考えても何も解決しない。

全てはこうなる運命だったのだ


邪教は王族にも蔓延っていた

第2王子が出奔してしまったのだ、邪教の遺跡に捉えられていると情報を掴んだ。

第二隊と第三隊われわれがついに邪教を殲滅する時が来たのだ。

私は戦って死にたかったのだ。せめて誰かの為に


隣国との国境沿いにある山脈に巨大な洞窟があり邪教の遺跡があった。

王都からの軍行のために到着がすでに夜中だったが、洞窟中に人がたくさんいるのがわかった。


「この国を蝕む邪教徒め!第2王子を奪還する!行くぞ!」

第二騎士隊の隊長は、第2王子の母君の実家の嫡男だ。

要は第2王子派だ。旗頭の奪還は絶対だろう。

休憩を提案するも、罵られて却下された。


邪教徒が、病に侵され気が狂った狂人に襲われていた。

私の燃やしてきた村々よりもっと地獄の光景だった。


「人が人を食らうのか、なんと悍ましいもう無理だ!」

そう叫んで、第二騎士隊の隊長が敵前逃亡した

副隊長はまともな奴で、動けそうな人間を集めて隊を率いて進んでいった。


迷宮から抜けられない中、迷宮の壁が崩れだした

みんな逃げようと走るが、人で出口が塞がってしまった

いや、違う、逃げた第二騎士隊の隊長が洞窟の穴を塞いでいたのだ必死に瓦礫をどかして逃げようと人々が押し寄せてていた。


絶望の中、迷宮の奥から光がさした!

見ると、両方を天使に支えられ白銀の聖女が光っていた。


「な、なんだあの光は!」

「人が飛んでいる!」

「天使だ!」

「聖女だ!」

「病に侵された人が光となって消えていく!」

「神の怒りに触れてしまった」

「我々は邪教徒と共に断罪されるのか!」

「ああ、どうかお助けを!」

「おお、どうか御慈悲を!」

「嫌だ、こんなところで死にたくない!」


病に侵されたボロボロの狂人(※ゾンビ)が光となり消えていく。

壁が消えてなくなり、見渡すと第2王子が邪教徒と間違われて切られていた。

あれではもう助からない…両足を切断されてる

仮に生き残って帰っても、第2王子の責任の全てを押し付けられて処刑だろう


全てに絶望していた


誰かの為に死ぬことなく、無慈悲の断罪をうけるのだ。それだけの事をしてきたのだ

全てを受け入れよう。


「神よ、どうか助けて下さいお願いします!」

天使に抱えられた白銀の聖女が涙をながし祈ったのだ、すると



奇跡がおきた



今までに感じたことがない畏怖の圧力がその場を支配して、誰もが震えて動けなくなる中

翼を織りなす者が顕現して聖女の願いを聞き入れてくれたのだ。


聖女が光に包まれ、柔らかな風が吹き抜けると体が熱くなった。

目を開けていられない程の輝きに満ちていたが、巻き起こる風に服がまくり上がり白いガーターベルトの下着が丸見えだった。


「た、隊長!傷が!」


「噛まれた腕が!」


部下たちが驚きに叫んでいる。私の体の全ての違和感が無くなっていたのだ、潰された目が治っていた。

洞窟内に歓喜の声がして奇跡の御業に体が打ち震えていた。体に残っていた拷問の古傷も消えていた。長年痛くて引きつっていた傷も、稽古でついた傷も全て消えていた。


私は、偉大な奇跡の御業の前では、ちっぽけな人間なのだと思い知らされた、治った目からも涙が溢れていた。

病に侵されたものには、苦しみから開放され安寧が訪れていたのだろう


輝く姿の世にも美しき白銀の聖女様が降りてきた。

聖鳥にまたがる美しい少年は人ではないのかもしれない。

貴族の様な容姿の見た目だが、本物の人間の貴族なら寝間着姿はさらさないはずだ。

人間の理を知らないのだろう、無辜の民を想い我らの為に涙する美しい聖女様を家族のように無遠慮に抱きしめておられた




ふと、視線を感じ顔を向けると昔私が逃した貧民の子どもがいた。

第三隊わたしたちが火をつけ焼いた村の中で、助けるのが遅くなり顔に火傷を負った子どもだった。

結局こんな洞窟にいたのか、私は助けたなんて傲っていたのだ。

忘れられなかった、忘れたことなど無かった。自らの所業でどんどん良心の呵責にたえられなくなっていたのだが、子どもの顔には傷一つ残ってなかった。


この場の全てが救われたのだ

私も救われてもいいのだろうか、赦されてもいいのだろうか


この場の全ての人間が跪いて頭を下げる中、私は畏怖の念を押し込め聖女様に声をかけた。

この中では1番私が発言権があったからだ

この時ばかりは、第三隊騎士隊長になったことを喜んだ。


近づくと、聖女様が人ならざる御方を隠して警戒した。


私はまだ赦されてもいないのに、厚かましくも聖女様の御手をとり跪いて最上の礼をとった。


貴女様は私の唯一無二だと示したのだ


聖女様が驚いておられた、無理もないことだ。

普通は騎士が唯一の主と認め、主に騎士と認められた誓をすませたあとにする行為だ、湧き上がる喜びに舞い上がってしまった


無礼だと咎められなかった、聖女様からは嫌悪感などなく、それどころか、私に興味がわいたような年頃の少女のような瞳で私の作法を見つめていた。


そんな見ないで欲しい勘違いしてしまいそうだ。


異国の白銀の衣装に惑わされていたが、近くで見るとわかる齢18頃の美しい少女だった。

見てはいけないと思いつつ視線がふくよかな胸、細い腰、戦うための服なのか太ももからスリットが入ってる為、歩くとチラチラ見える白いガーターベルトに魅入ってしまう。


私はまだ20歳だ、もし・・・いや考えてはいけない、浅ましい思いを抱いてはいけない。


恥しさを隠すためにつらつらと国の現状を喋る。

少女の慈悲深い瞳が私を見る。

私はこんなに喋った事があっただろうか、私はいつの間にか泣きながら自分の罪を懺悔していた。

この国の民を救って欲しい、私も赦されたいと懇願していた。


「間違いは誰にでもあります…よ?」


切なく優しい声だった。

私の罪が赦されたと思ったのだ

すると聖女の瞳があの貧民の子をうつしていた。

お前の消えない罪だ、そう咎められたのだと思った


すると聖女の奇跡がおきた。

聖女の手から赤い実が湧いて出て子ども達を呼んだ。(※アイテムボックスから出した)

あの赤い実は北の冬にしか採れない実ではないか?


「君たち、私と一緒に行きますか?もうここに帰って来れないかもしれませんよ?」


「聖女様連れてって」

「お腹すいた…」

「僕らを助けて聖女様」


聖女様が連れて行くがよいかと問うと無垢な魂に慈悲が与えられた。このまま苦しんで死ぬくらいならと、子どもたちが光に包まれて一瞬で消えてしまった。

神の国に行ってしまったのだろう

やはりこの少女も人ではないのかもしれない


与える慈悲が人の理とは違うのだ


騒がしくなる前に

偉大な知識で病の正体と解決方法を我らに説いて聞かせた

「ビタミン不足で壊血病にかかってるんだよ

保存用の乾燥野菜じゃなくて、生野菜を食べて?庭に生えてた木苺置いてくから…」


奇跡の御業でまた、あの幻の赤い実を出した。

聖なるお方の庭の果実?つまり楽園の庭の果実だと?……おぉ神よ!

たくさん出たから、遠くの人々にも見えたのだろう人々が騒ぐ。



「手を貸して下さい」


聖女様は私が無辜の民を苦しめて村々を焼いてきた償いを自らの手でせよとおおせだった。

そして、奇跡の御業を私に伝授して下さったのだ


私の手を取って下さったのだ、やわらかくて白い手だった。


私の血にまみれた汚れた手をとって何度も何度も奇跡を私に示して下さる。


「こう、こうやってこう!この世界の妖精の使う奇跡……の魔法陣?文字?だよ。覚えた?こうやってこう!隊長さんMP高いしイケると思う…ほら指先に集中して!」


最初は正面にいたのに、気づくと横に並び手に手を重ねる。


「ちゃんと集中してよ!出来るまでやらせるからね!こうやってこう!手見てる?

種が育つ…暖かくなる妖精の奇跡?この世界の不思議な魔法陣。覚えて!」


その体は生きてる人間の体温だった、この少女は生きてる人間の少女だ。

何度も視線を合わせ吐息がかかるほど近づくと女の甘い香りがした。

真剣に私を見つめてくる少女のその瞳には確かに私がいた。

こんな距離で異性と話したことなどなかった、酒場の裏で死んだ両親でもここまで近くなかった。

緊張から震える手を何度も導いてくれる

まるで恋人のように優しく、母のように温かく手を添えられた。


「あれぇ?…ねぇ顔と胸ばっか見てないでちゃんと集中してよ!もぅ!」


汚れた私にできるのか不安だったが、奇跡が私にも使えるようになった。

指先が光り空中に奇跡の図面ができていく!奇跡だ!


「やったー!出来たぁ!!ふぅー」

少女が我が事のように喜んでくれて、私にもやれば出来ると励まして、私は赦されたのだと教えてくれた。


そのやわらかな声で私を見据えてくる笑顔が愛おしくて、手が体が熱くなる、こんな輝く笑顔を私にむけてくれる人なんて今までいなかった。


力が溢れて胸が熱くなり思わず抱きしめたくなった

すんでのところで聖鳥の御使い様の御膳だと思い出した。


そして甘くなる奇跡というのも伝授して下さったのだ。これ以上甘い雰囲気など、こんな甘い時間を過ごした事などなくて顔が目頭が熱くなる


すると、またもや偉大なる奇跡を私に示して下さったのだ!

足元に転がっていた赤い実から次々に芽が出て、伸びていたのだ

我らに生きよと奇跡の御業で導いて下さるのだ

腹の底から熱くなり、心臓が締め付けられる思いだ。


何かお礼を、この熱い想いを伝えたくてポケットを探っても泡の実しか無かった


そしたら少女の瞳が輝き、まるで私の事を探し求めていた運命だと言うようにご尊顔が喜びに染まり私の手を握って下さったのだ。


そして、幼子のようにこの手の中の実を欲しがるのだ。


「シャンプーの元になる実だ!この国にあったんだ…温泉が出たから売れる!」(※ムクロジ)


この泡の木の実は売れると言う、その辺に転がっていた、ただのなんの変哲もない食べても美味くないこの実が売れると言う


温かい湯があふれる、楽園のような彼の地で必要とされるのだと言う

なんの変哲もない自分を必要としてる、そう励ましてくださったのだ


香油が売れることは知っていたが、何かのメッセージなのだろうか?


すると、暗かった洞窟に光がさした

第一騎士団が応援に来てくれたのだ、第二騎士隊長が塞いだ穴を開けて、太陽の光が入ってきた。

朝日にあたり、さらに輝いた白銀の聖女様はもう戻る時間だと焦りだした。


顕現していられる時間はとうに過ぎていたのだろう、泣きそうになっていた。

我々同様、洞窟が暗いから夜だと思っていたのだ。


これで、もう会えなくなるのか?

胸が手が不安に痺れる、そんなのは嫌だと汗が出てくる

追いかけようとしたら、罪深い私は動けなくなった。

13歳の時に拷問で潰された私の下半身も天使の奇跡で癒されていて、その情熱が今になって滾立たぎってしまい動けなくなった。

聖女様のお姿は、少々異国情緒ありすぎて私にはこらえきれなかった。


太陽に輝き美しい聖鳥にまたがり人ならざる少年の姿の御使い様が飛びたった

第一騎士隊の奴らが入って来て驚きの声をあげる。


「待って下さい、私も連れて行って下さいお願いします」

私の浅ましい願いは他の声に掻き消されて届かなかった。


最後に小さな何かの御神体(※フィギュア)をおいていかれた。

そして、我々を振り返り叫んだ


"自分の未来は自分で切り拓け!これ以上甘えるな!創造主でさえ何でも全ての願いを叶えるなどしないと思え"


厳しい言葉の中には、確かに愛があった

我々を決して見捨てずに、自分でやれば出来ると想いが込められた励ましのお言葉であった。

先程も奇跡を私に示して下さったのだ、今まで受け身でいたけど私は自分の意志で立ち向かう時なのだと。


私は再び涙した。

そして、御神体(フィギュア)から顕現した見たこともない異国の衣装の眷属が跪いて頭を下げていた。


「創造主様のお言葉しかと受け取りました」


第2王子が、死にかけで気絶していたが途中から起きていたのは知っていた。

私は聖女との交流を邪魔されたくなくて黙っていたのだ。


第2王子が第一騎士隊の隊長に起こされて、顕現した御神体に駆け寄り抱擁していた。



後になって紐解かれた事実は

全ての諸悪の根源の教祖が、この御神体を封じ込めて無辜の民を騙して金を搾り取っていたと言う


この御神体は、不思議な御業で人々に安らかなる眠りと、癒しと安寧をもたらしていたという。

人の理ことわりと違うと言うのは嫌でも知っでしまった。


我々と解釈が違っていてもおかしくない。

悪いのは教祖だと第2王子も証言なさった。

私は聖女様のお言葉だった隣国へ泡の実を売りに行くのだ!


そのことは、あの奇跡がおきた場にいた第二騎士隊の奴らも証言してくれた。


潰れていた目が治ったのを見せた。

神の奇跡の前には役員議会も国王の糞も黙らせる免罪符となった。


第2王子と第二隊も第三隊も近くにいた奴らも奇跡の祝福を見ていた奴らは、差はあれど己が魔法陣を行えるようになっている。

やるに気になったやつらに全てを丸投げした。


私は国の使者として、信託を受けた身として隣国へ向かう、聖女の手がかりが少しでもほしいからだ。


恋焦がれるなんて、自分には一生縁がないものと思っていた。

私はあの美しき白銀の聖女を求めてやまない



見た目はムキムキマッチョの枯れてるおっさんですが中身は20歳の若造

遅咲きの初恋と青春がやってきて拗らせてる隊長

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

白銀の聖女と騎士隊長の初恋 ワシュウ @kazokuno-uta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ