最終話 最期のその時まで…

思考を深くして様々な可能性を考えてみたのだが…。

どうやら僕には答えを出すことが出来ないようだった。

それもそのはずだ。

若く多感な僕でさえ出すことが出来なかった答えを今の僕が出せるとは思えない。

だが答えを出さないとならない日は刻々と近付いてきているのであった。



次の休日も彼女らは僕の家を訪れた。

早速本題とでも言うように桃園若菜が先んじて口を開く。

「答えは出た?」

僕を試すような挑戦的な笑みを目にして僕は少しだけ自分を情けなく感じてしまう。

首を左右に振って答えが出ていないことを表現すると彼女らは軽く落胆したように嘆息した。

「僕には決められないよ。三人のこと平等に好きだから…」

消極的な言葉を口にした僕に若林菜々子は反論するような言葉を口にした。

「じゃあこのまま誰も選ばないで…私達が他の人と結婚しても…麟は耐えられるっていうの?」

彼女の言葉に僕は必死で首を左右に振る。

「じゃあ誰か選ばないと…」

柿田白菊も残念そうな表情で言葉を口にすると数回頷いていた。

「本当に誰か選ばないとダメなのか…?」

そんなどうしようもない言葉に彼女らはピクッと反応する。

「どういう意味?」

桃園若菜は僕を試すように続きの言葉を誘導しているようだった。

「いや…何でもない…」

しかし僕は続きの言葉があまり適切なものではないと感じると日和ってしまう。

「ちゃんと言ってみて?」

逃げようとする僕に桃園若菜は決して逃がしてはくれない。

しっかりと最後まで自分の気持ちを表すようにと微笑んで僕の言葉を待っていた。

「えっと…付き合うなら皆と付き合いたいっていうか…誰か一人は無理だから。でもそんなことは皆が許さないでしょ?これはもしもで僕のワガママでしか無い話なんだけどね…」

苦笑交じりにそんな提案をしてみると彼女らは顔を合わせてパッと表情を明るくさせていた。

「それでいいじゃない」

「私も…もうそれでいい」

「それが一番平和かな」

三人は何故か了承の返事をくれて僕は思わず驚いて言葉を失う。

「本当に良いの?」

再確認する僕に彼女らは当然とでも言うように頷いて答えた。

「でも…何で?」

疑問に感じていたことを尋ねてみると彼女らの答えは重なった。

「一生失いたくないほど…大好きだから♡」

そんな言葉を三人分受け取ると糖分過多で甘いジュースの中に溺れているような気分だった。

「そっか…僕も三人のこと…それぞれ大好きだよ…」

僕の言葉を耳にした彼女らは嬉しそうに微笑むと今後のことを話し合うのであった。



こうして僕は幼なじみ三人と付き合うことになる。

皆でルームシェアを始めると遠い未来でも僕らはいつまでも仲良く四人で過ごすのであった。


八年間という月日の中で…

会えない時間が僕らの中で愛情を育んでいたのであろう。

僕らは今後もお互いを大事に想い続ける。

最期のその時まで…。


                  完

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桃栗柿八年待った結果…彼女たちは僕を信じられないほど大好きになっていた件 ALC @AliceCarp

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