消えない陽炎

全てが完璧だと思えた日に 砂利道で 消えない炎を コレクションに加えました。

(2女司祭正、ペンタクル10正)




よく晴れた夏の朝、起きた途端にこう思った。

今日はなんていい日なんだろう。今日は全てが上手くいく。そんな予感がした。

その証拠に、自転車に乗って出ても行き合う人は誰もいない

この熱気のある空も見渡すかぎりの景色もまとわりつく風もぜんぶ僕のものだ。



長い坂道を一気に下っていく。シャーッと軽快に車輪のまわる音が心地よい。

前方の道路がゆらりとゆらめく。向こう側が歪む。陽炎。

勢いのままに、陽炎が消える前にそこに飛び込んだ

手をぐっと前に伸ばして、掴んだ。熱いわけでもなく、焼けるわけでもない。

けれどもその炎は消えず、心の中にそっと仕舞われた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

小さな小さな物語 (「一行作家」とタロットより) 星見守灯也 @hoshimi_motoya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説