私
朝起きると頭のてっぺんから白い糸が伸びていた。こんな現象は今まで一度も起こったことがなかった。最初は長い白髪だと思い、その毛であやとりを始めて見たものの、飽きたからやめた。とりあえず、眠気覚ましののりたまを口に流し込む。卵はやはり卵白に限ると思った矢先、チャイムがなった。どうやらたどり着いたらしい。幾千の海を超えた猛者のチーズを持ったジーザス。チーザス。
「ちっす。」
チーザスがインターホン越しに挨拶をしてきた。ジーザスの解釈違いで嫌な気持ちになったのでドアは開けないでいた。やつはそれでも大声で挨拶を続けている。あいつはいつまで玄関前に突っ立ってるつもりか。迷惑なあいつは置いといて、私は用事があることを思い出した。
今日はノミのみぞ知る蚤の市の飲み物を手に入れる必要があった。しかしそのためにはどうしても家から出る必要がある。どうしたものか。少し考えひらめいた。糸を窓際に巻きつけ、窓から抜け出す事にした。靴はない。それでいい。私は窓から身を乗り出した。地面に着地を成功させた。チーザスはまだこちらに気づいてはいない。相も変わらずちっすを発している。この調子だ。私は恐る恐る歩を進める。突然、ぷちっと糸が抜ける音が辺り一面に響き渡る。しまった。考える暇もなく、チーザスがゆっくり首をひねる。そして私と目があった。私は走り出した。靴を履いていないというデメリットを払拭するためにもこれまでになく足を動かし続けた。チーザスは走らない。それなのに私との距離は離れない。さらに彼の手の中のチーズがとろけてきた。やつは追跡ついでにチーズを美味しくいただこうとしている、実に腹立たしい。私はチーザスの手を取り、ほおばった。私は神の手を手に入れた。
嘘日記 宇宙籠城 @4696_abyss
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