第23話 寂しいよ。(マーレ神目線)



「マーレ、私は消えたいのだ。」



いきなりのことで、言葉を失った。

ハガラスに膝枕をしてもらい、穏やかな日々を過ごしていた。


争いは少なく、私はまだ外見が10代の少年の出で立ちであった。


ハガラスは私が生まれてからずっと、強かった。弱音も吐かず、私が決闘を申し込んでも揺らがなかった。


戦って、負けて。


勝てないのだと、本能で理解し、だったら強さの秘訣を学ぼうと、ハガラスにつきまとった。


最初は面倒そうにしていたが、日が経つにちれて、親しみを持ってくれるようになった。


私の近くにいて、困ったときは助言してくれていた。


親のような兄のような。

居なければ居心地が悪い。

不思議な関係だった。


だからこそ、驚いた。


「何…言ってるの?……神がそう簡単に消えるわけないだろう?ましてや、ハガラスは……原神なんだから。」



「……なりたくてなったわけではない。…疲れたのだ。去りゆくモノ達を見送る立場に。私は自分以外を破壊する存在なのだ。」



「……それは…ハガラスは破壊と孤独の神だから…生物の成長のために必要だよ。」



「……わかっている。だが、私は解放されたい。永久に続くのは本意ではない。」



神として長くある、と言うのも楽ではない。


もちろん、神同士でぶつかっても、力が相殺するため、消滅はできない。

それは既にハガラスもマーレと決闘したときに気づいていた。


マーレはまだその気持ちを全て理解することはできないだろう。

生きてきた年月が違いすぎる。



「……自分で無理なら、他の存在にやらせるしかない…。」


「他人に…出来るだろうか。神を殺す存在を作り出すことは…」



「構築再生のラミス神にきいてみる?」


「どこにいるかわからない。」


「私は知っているから、今度連れてくるよ。」


「あぁ…ありがとう……。これで孤独を解消出来れば良いのだが…。」



優しく頭を撫でられる。


私はあなたが居ない世界なんて…

考えてられない。

同じ気持ちを持っていると思っていた。


私と過ごすのはもう飽きたの?

私がいても孤独だった?



でも言えなかった。





その後、この話はあっさりラミス神が叶えてくれた。


ハガラスは魔王として外界で過ごすことが多くなり、私は独りになった。


初めて《勇者》達に負けて、ハガラスが散っていった時は、本当に消滅したのだと、…悲しみ、止めなかった自分に後悔に暮れたが、数年経つとハガラスが地下に復活していた。



記憶は維持しており、見た目も変わらなかった。

だが、また《勇者》達が生まれたと気づくと、また魔王城に戻るという。


姿を変えて、新たな魔王として。



その後


私には

「また戻ってしまった。」

と深い悲しみを向けて戻ってきた。


その繰り返しだった。


だから、私はラミス神に願った。


「ハガラスの願いを叶えられる存在を」


と。

この人の孤独を癒やせるモノを、生み出してもらう。


「私の可愛い《賢者》。」


加護をあげる。

《賢者》が彼を救ってくれると信じて。



私の寂しさは、

君が埋めてくれると信じて。








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聖女が嫌いなので。 カナデ @kadena-k

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