ラクになりなよ
唯野 志雄
毒だって薬だろ?
ここは脱法ドラッグ屋。
本来なら、こんな店開かれるべきじゃない。
そんな事は俺だって分かってる。
でも、残念ながらこの街では大勢の人々が脱法ドラッグを求めている。需要が高いんだ。
230年前、この国は不老不死を実現させた。
年老いた顔は整形で直せるし、何をしても死なないしでこの国は素晴らしいものになったかのように見えた。
みんな、何でも出来るんだ。
時間はもう許したから、いくらでも。
でも、もうそろみんな飽きてきた。
やりたいことをするよりやりたいことを見つけるほうが大変になってきたんだ。
そんなら、死ぬかという時には国はあらゆる死亡手段を封じていた。
そうして、この国で残された死亡手段は脱法ドラッグだけ。
そんな哀れな俺等のため、俺は脱法ドラッグを売り始めた。
もちろん金は相応に頂くけど。
「さあ、どれを買うんだ?」
目の前の少女いや、老婆はポケットから財布を取り出して、店内を見回した。
「じゃあこの水になって死ぬ薬をくれる?」
「値段は2000円だな、それでいいか?」
彼女は少し驚いた顔をした。
無理もない、俺は大赤字だしな。
「あんた、ここまでそれなりに苦労したろ」
「その御駄賃分、割引だ」
「そうかい、ありがとう」
彼女はものを受け取るとその場で飲んだ。
「あんたの顔、覚えておくぜ」
笑った彼女は濡れた一万円札を残して溶ける。
「ちょっと、お釣り渡せないんだけど」
男は少し困ったように笑った。
ラクになりなよ 唯野 志雄 @tadano_shio
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