第3話 業

私はドアへと駆け出した。取っ手を握った。

押した・引いた・滑らせた・外そうとした。

だがドアはその場に留まっていた。

外へ出られない 

外へは出られない

ついにおかしくなったのだろうか。


男は笑っている。

「お前は灰にはなれないよ。」

男はこういった。

「また赤からやり直しだな。」


大きな音がした。

屋根が切り落とされるようなそんな音だ。

だんだん周りが明るくなってくる。

少しづつ意識が薄れていく。


男は頭に直接伝えてきた。

「今度も中性子線で死ぬのか?」

私は思い出した。そして笑った。

「私は灰色に焦がれている。世界が灰色になろうと満足できなかった。私は私自身の灰色が見れるまでこれをやめることはないだろう。」

男は笑っている。私も笑っている。

「それは無理だ。灰の男よ。」


私は灰色が大好きだ。


だが灰色にはなれない

終わることができない

ゆえに焦がれる、ゆえに見ようとする

私自身の灰色を

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灰色 lie @ryu_nukkr_

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