第2話 盟友の暗殺回避

 朝食を食べていた時、アンナに色々質問をしてみて、此処がヴェネツィア宮殿だとわかった。朝食を終えて外に出た時、玄関前にFIAT社製の車が停車していた。隣にいたアンナが、改めて今日の予定を話す。


「ドゥーチェ。今日は国会議事堂で会議があるので、こちらの車に乗ってください」


「わかった」


 車に乗って走行中に私は運転席に座るアンナに話しかけた。


「ドルフース夫人は、もうローマに来ているのかしら?」


「はい、既にオーストリア大使館に到着しているそうです。明日にはリッチョーネに出発するとおっしゃっていました」


「今日中に会談の場をもうけて」


「わかりました」


 会話が終わると、アンナに朝から気になっていた事を話した。


「気になっていることがあるんだけど、いいかな?」


「なんでしょうか?応えられる質問だと、良いのですが」


「なんで私はこんなに髪を短くしているの?」


 そう質問するとアンナは一瞬驚いた後、安心した様に『なんだそんなことですか』と呟き応えた。


「かなり前ではありますが、ドゥーチェが『癖っ毛が年々酷くなっていくのから、もういっそのこと短い方が楽』とおっしゃたじゃないですか、その日中に美容院で切ったのを覚えています」


「そうだったんだ」

 

 そういえば、史実のムッソリーニも頭の毛の量が少なくなってくると、思い切って丸坊主にしたって言われているから、その行動は納得できる。


 まあ私は個人的に長い方がいいから、髪を伸ばしてみようかな…


「ええ、ドゥーチェの思い切った行動は、当時かなり話題を呼びましたからね。その後、新聞記者からの質問に対する応えが『まあ、こっちのほうが朝の身支度が楽だし、何より短い方が格好良くて女の子からモテるでしょう?』と言ってからは女性達の間でショートカットブームが起こりましたからね。それと一部の男達はドゥーチェの髪型変更に地中海ができる程の大量の涙を流したとか」


 その時、ムッソリーニは女になっても、女の尻を追いかけるスケベだったのかと複雑な気持ちになった私は悪くない筈だ。


 車が国会議事堂前に止まり、アンナに促されながら足を運んだ。その後、私は国会議事堂で大臣達と会議を行った。誰もわからなかったのだが、アンナが教えてくれた。


 この様な会議は前世を含めて初めてだったので、暫く固まってしまった。そのせいで会議が終わったあと、大臣達から凄い心配された。


 あと会議を進めていく中で少しずつだけど、ムッソリーニの記憶が思い出しつつあるし、会議の途中からは自然と議論していたから、身体が覚えていると言った方がいいかもしれない。


 その後、立て続けに会議や執務室で国内外の報告書を読み漁りサイン等を続けていたら、いつの間にか18時を過ぎていた頃、今朝の様なドアをノックする音が執務室に響いた。


「入っていいよ」


「ドゥーチェ、お疲れ様です。この後は今朝言っていたオーストリア大使館でのドルフース夫人と会談で終わりです」


「ようやくか…はぁ」


 私は、ようやく本題に入れると思いながらも疲れが溜まっていたのか、深いため息が出た。


 そうして準備をした後、ヴェネツィア宮殿前にとめてある車に乗り、オーストリア大使館に向かった。20分程車に乗ったあと、オーストリア大使館に到着した時にドルフース夫人とオーストリア大使夫妻が出迎えてくれた。


「こんばんはドルフース夫人と大使夫妻。夜遅くにすいませんね」


 と自然と出たドイツ語に驚きつつも。そう言えば、ムッソリーニは英語・フランス語・イタリア語・ドイツ語が話せていたっけ、と思いつつ会話を続けた。


「いえいえ、私達の仲ではありませんか。それに私達は、明日にリッチョーネに向けて出発して、ローマには居ませんから、大丈夫ですよ。それと子供もムッソリーニお姉さんが来るって待っていたのですが、夕食を食べて眠たくなってしまったのか、もう寝てしまって」


「いえいえ、子供ですから仕方がありませんよ」


「そう言ってくれると有り難いです。さあさあ、夜遅くに外で話すのもなんですし、応接室に行きましょう」


 そうして、私達は応接室に入り、イスに座った。


「それで会談の場を設けるという事は、何かあったのですか?」


 とドルフース夫人が言ってきた。


「ええ、ドルフース首相に報告する事があって、会談の場を設けさせていただだきました」


「なんでしょう?」


 未来の事をそのまま言っても、信じて貰えないだろうし、諜報員からの報告としておこう。


「実は、我が国の諜報員から報告で、5日後の7月25日にオーストリア兵に変装した。オーストリア・ナチスの党員10人が首相官邸に押し入り、ドルフース首相の暗殺を計画しているようです」


「なんですって…!」


 暗殺計画を報告した時にドルフース夫人は驚き。隣の席に座っていたオーストリア大使は冷や汗をかいていた。


「はい、ですのでドルフース夫人が大使館に滞在している内に知らせようと思いまして」


「ありがとうございます。夫に知らせようと思います。大使は夫に電報で伝えて下さい」


「わかりました」


 大使が急ぎ足で応接室から出ていく。


「夫の危機を伝えて下さりありがとうございます」


「いえいえ、友人として当然のことですよ」


 そもそも、この世界で私に親しい人がわからないから、出来るだけ仲が良い人は生きていてもらわないと困る。


 その後は、雑談をしたあと、大使館を後にして、車で自宅に戻って私室に入った後、ベッドに仰向けになって懸念を口にする。


「今出来る事はやった。後は結果を待つだけだけど、この報告がこの後の歴史が変わってしまうんだね…」


 歴史はほんの一つが変わってしまうと、その後が全く変わってしまうで、歴史が変わりすぎないようにしないと、この先がわからなくなる。歴史にifはないって言うけど、この世界でムッソリーニが女として生きているから、他にも変わっていないか確認しなければ…そう考えている内にいつの間にか寝てしまった。


 それから5日後にオーストリア兵に変装した。オーストリア・ナチスの党員10人が首相官邸に押し入ったが、私の報告で首相官邸の増強された護衛兵との銃撃戦で全滅したらしい。


 その後、拘束された党員を尋問したのちに、オーストリアはドイツに強い抗議を行い。イタリアもドイツを非難し、オーストリアの独立を保証する宣言した。


 列強国のイタリアが後ろ盾となったことで、オーストリア国内では次々とオーストリア・ナチスの党員が摘発・逮捕されてオーストリア・ナチスは壊滅した。


 その報告を受けたヒトラーが激怒して、オーストリア・ナチスの活動を党員増強までの間、無期限停止にしたという報告をリッチョーネの別荘でドルフース夫人と談笑中にアンナから伝えられた。


 歴史を変えてしまったと思いつつ、これから、ドルフース首相が来るということで、私は準備に追われるのだった。


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参考文献

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[1人版]イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気をださせイタリアを勝利に導く〜 鹿島 皐月 @hekagenomomizi5

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