もしも透明人間が女なら全裸じゃないか

タカハシU太

もしも透明人間が女なら全裸じゃないか

 アタシはついに透明人間になる薬を手に入れた!

 そう、今、アタシは素っ裸。路上にいるのに、町ゆく人たちは気づきもしない。せっかくうら若き乙女の生まれたままの姿なのに。もったいない!

 イタズラだってできてしまう。デコピンしたり、蹴飛ばしたり。男性アイドルにもキスできちゃう。ヒーローにもヴィランにもなれるんだ。

「イタッ!」

 足の裏に痛みが走り、思わず口に出てしまった。周囲の人たちは一瞬、辺りを見回したが、すぐに元の行動に戻っていった。

 足もとにしゃがんでみると、小さな石ころがあった。素足は危ない。

「ハクション!」

 くしゃみも止まらない。さすがに真冬に全裸は無理だ。暖かくなったら、再開するとしよう。

 家に帰るため横断歩道を渡ろうとした瞬間、真横から激しい衝撃を受けた。アタシの体が宙に舞い、視界に空が広がった。

 そうか、ドライバーにとっては、この姿は見えないのだ。地面に叩きつけられ、身動きできないアタシは意識が遠のいていく中で悟った。

 助けを呼んでくれる人は誰もいない。


               (了)

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