第4話

 このままもっと聞いていたいが、そろそろだろう。

しかし……スッキリとした。

今までの彼らの鬱憤が全て言葉にされてぶつけられたようだ。

実に胸が空く思いだ。


 そう思いながらレヴァノスが頃合いを見計らっていると、ゴロドノフがやって来た。帝国の暗部を司る男である。

「殿下」

言葉少なく彼はレヴァノスの足下でひざまずいた。レヴァノスは告げる。

「もう『あれ』は駄目だ。これ以上生かしておけば帝国にとっての災いになる。折角、一度は温情をかけてやったのに、何も理解せずに裏切ったのだから。

――『あれ』の関係者ごと、一切を処分せよ」

「承知」


 ゴロドノフが承諾して去った後、レヴァノスは2方面からの凄まじい舌鋒にただただ叩きのめされているリリアナ元皇女に近づいた。

「おい」

「あっ、お兄様!助けて下さいな!この者達が私を侮辱するのです!」

「侮辱?何のことだ」

「だってディサッシェン公子とその婚約者の分際で!皇女である私を!」

「貴様はもはや皇族ではない」

レヴァノスが言った言葉がしばし理解できなかったのだろう、リリアナ元皇女は曖昧な笑みを浮かべた。

「お、お兄様……?」

「先に私が言ったことをもう忘れたのだな。修道院から抜け出せば皇族としての身分を剥奪すると何度も警告したのだが」

「剥奪……って、」

ようやく理解できた瞬間にリリアナ元皇女は青くなった。

「嘘でしょ!?私は、だって正真正銘の皇女として生まれたのよ!」

「確かに皇女として生まれたが、何も皇族として生きてこなかっただろう。

近衛兵、ただのリリアナを牢獄へ連れて行け。――パタニゴア侯爵令息、リンゲーン男爵、貴様共も逃げられると思うな」


 「とても不愉快なものを見ましたわ」

ユウェナリア男爵令嬢が呟いた。言葉を重ねるように、メレンドルフも言う。

「レヴァノス皇太子殿下、どうしてアレを今までのさばらせていた?それとも帝国の皇族の品位と規範はアレが基準なのか。零落れたのか零落れさせたいのか。どちらにせよ殿下の甘さが原因だ」

「……うぐ。申し開きの言葉もない……」


 ……それからしっかりとレヴァノスも2人から言葉で叩きのめされ、夜会の後で配下達や皇太子妃に慰められたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【完結】男好きの元皇女がバカップルのダブル舌鋒でボコボコにされる話 2626 @evi2016

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ