第209話 満足
「くっ。やはり変装してくるべきだったか…」
「私はするべきだって言ったわよ」
とある喫茶店に入って一息。
念願の歌舞伎町にやって来てから2時間ほど。
俺達全然聖地巡礼出来ていなかった。
めざといファンが俺達見つけて、写真だのサインだのを求めてくるんだ。
最初はオッケーオッケーと快く対応してたんだけど、人が人を呼んで、とてもじゃないけど観光なんてしてられないぐらいに集まってしまった。
集団になっちゃうと普通の人に迷惑が掛かるし、さっきようやく切り上げてここに避難してきた。
「だって気になる場所とかで写真を撮る時に変装した姿じゃ味気ないし」
「行きたいところに行けなかったら本末転倒よね」
「それはそう」
申し訳ないけど次からは断ろう。これじゃいつまで経っても目的を果たせない。しつこい厄介な人は警備員さんに目を光らせてもらうとしよう。
「ミレニアムタワーって実際はないって知ったのが一番の衝撃だったな」
「ビルは建ってるけどね」
それから、丸一日掛けて歌舞伎町を歩き回り、大満足になった俺達。
昔は本当にタワーがあると思ってたんだよなぁ。
数々の爆発被害、銃撃被害に遭った如くシリーズのメイン盾。とりあえず何かしでかすなら、あそこをターゲットにすれば話が進む。どれだけ被害が出ようが何度も何度も復活した不屈のビル。
俺は実際に建てられたのをモデルにしてて、如くシリーズのスタッフはミレニアムタワーに何か恨みでもあるのかと思ってたんだけど。
実際にはないのね。
他にもバッセンに行ってひねくれたカーブを打ってテンション上がったり、駐車場のところにあるホストの看板を見て、そっくりだと驚いたり。新宿ゴールデン街で喧嘩を売られないかとビクビクしたり。
「思ったよりも忠実に再現されてるだな」
「時代の流れで変わってる所も結構あるけど、大枠はそっくりよね」
ほんと大満足。来て良かった。
心配してた喧嘩を売られるなんて事もなかったし、強面なその筋の人が当たり前に歩いてるなんて事もなかった。
やっぱりゲームと現実を混同しちゃいかんね。
実はステータスの運が仕事して、厄介な人達に会わない幸運ってのがあったのかもしれないけど。こればっかりは分かりません。
「焼かれてこそ価値のあるホルモン美味し」
「流石に焦げる程焼かないけど…」
「それは言っちゃいけねぇよ」
今は歌舞伎町の如くシリーズとは全然関係ない焼肉屋さんで晩御飯。どうせなら何か関係ある場所に行けば良かったけど、焼肉の匂いには勝てませんでした。
「いい息抜きになったなぁ。来年に向けて活力が湧いてきたぜ」
「来るのが怖くて敬遠してたけど、勿体無い事をしちゃったわね」
まあ、それでも夜の歌舞伎町は怖いから、焼肉を食べたらとっとと退散させてもらうけど。夜が本番な町だろうけど、流石にデビューしたてで夜のここを楽しもうとは思わない。
警備員さんに守られてようが、怖いものは怖いのである。
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作者、主人公と同じで歌舞伎町に行ったことがないんですよねぇ…。
東京には何度も行きましたが、本当に怖いイメージがあって行けない…。
今回の話も動画サイトで聖地巡礼してる人の動画を見て書きました。いつか行ってみたい。怖いけど。
俗物夫婦回帰転生 Jaja @JASMINE4
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