第23話

 リリー

 

 職業:女王様志望

 Lv:7

 HP:79

 MP:111

 力:6

 体力:3

 素早さ:5

 知能:12

 精神:22

 魔力:9

 運:2

 EXP:89

 SP:3


「なるほどなー」


 表示されたリリー姉さんのステータスを見て俺は考える。HPは結構高くて、SPよりも圧倒的にMPが多い。つまり、このドSに恋い焦がれてる姉さんの現状の資質は”性欲強めなマゾ”ということだろう。


 ……キツイかもな。


 実際MだSだなんてのは生まれつきの部分が多い。後天的なトラウマなんかに左右されて目覚めることもあるが、それでも最低限な素質はなけりゃムリだろう。まだ救いがあるとすれば、現状がMだということ。


 SがMになるのは本当にキツイ。Sの人間というのはナメられることを非常に嫌うことが多い。Mとしての立場なんかムカつくばかりで性的な興奮に繋げるのはむずかしいだろう。


「そもそも聞きたいんだが」


 なので俺はまず、根本的なことから質問することにする。


「リリー姉さんは、どうしてもドSにならなきゃいけないのか?」


「えっと、……でもこの街で暮らすのなら女性はSじゃないと」


「街を出ちゃダメなのか?」


「街を、……出る?」


 そう、訊いておきたいのはこれだ。自分が性的にMとして生きるのか、Sとして生きるのかっていうのは生きていくうえでとても大切なことだ。それはどんな衣服を身につけるかよりも、どんな仕事をするかよりも、どんな場所に住むことよりも大切なことなんじゃないかって俺は思うのだ。


 エロというものにどう接していくか。それはある意味人生のテーマ一つだ。たくさんの異性と性交渉出来る立場になるためにいい仕事について稼ぐことを目指すというのもまた人生。逆に、性的魅力をつかって稼ぎまくるというのもまた人生。それと同じように異性に対して支配的な性欲を向けるのtか、隷属的な性欲を向けるのかもまた人生なのだ。それによって異性への姿勢は変わる。それは本能への姿勢を変えるということだ。


 異性への、本能への姿勢はそのまま人生へと直結する。食欲、性欲、睡眠欲。それらは人生を豊かにもするし滅ぼしもする。


 だから俺は、このことに触れず、リリー姉さんの真意を確認すらせずに口出しするのは無責任だと思うのだ。


「うーんと、引っ越しかぁ、正直、考えたことは、あるよ」


 俺の問いに、リリー姉さんは控えめにそう答えた。


「そうか、なら、俺はドSへの転向はあまりおすすめはしない。現状どちらかというとMなのならば、それをより極めていったほうがより強く性を愛し、強くイクことが出来ると思うし」


 しかし、俺のそんな意見にリリー姉さんは俯きつつも、その瞳にははっきりと反対の意志が宿っていた。


「それは、すごく、わかるよ? ……でも、あたしはどうしてもドS姉さんになりたい! あたしは、……その」


 言いながら、途中で口ごもってしまう。言いにくいことなのだろうか。少しでも言いやすいよう俺は、口元を少しだけ緩めながら、先を急かすこともせず言葉の続きを待つ。


 しばらくした後、リリー姉さんは意を決したように続けた。


「あたしは、……いや、あたしには好きな人がいて、その人はドMなの!!」


 なるほど、そりゃあ確かにドSを目指す理由になるな。

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現実世界ではただのモブだった俺が、変態さとドMさがステータスになる世界で最強になってドMスキルで無双します。 ゆきだるま @yukidarumahaiboru

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