異世界転生でよくある(らしい)、
「前世からの記憶をそのまま引き継いで転生」
という、アレ。
アレは端的に言って、自分だけいろんな知識を持ったまま新しい人生を送りたい!という決意表明なわけですが、となると記憶を持っていても身体が未熟で、語り手が能動的に動けず、話が成立しない「赤ちゃん」という時期は、まあ普通は省略されて、つつがなくストーリーは続いていきます。
しかし本作では、その「普通は省略するところ」だけを抽出してストーリーを成立させています。まるで人力ブレイクビーツですが、その結果として
「赤の他人の爛熟した乳房をくわえる」
「赤の他人に自分が排泄した大便を拭き取ってもらう」
など、赤ちゃんに必須な行動をまともな理性で受け止めざるをえず、苦悩と苦痛を覚える(理性があるので、それを豊かな語彙で表現してくる)主人公のありさまを、とてもいきいきと活写した作品に仕上がっております。
マジで時間をすっとばす兆候がまったくなく、まるで成長せずに話は続いていきますが、だからつまらないとは口が裂けても言えません。ていうか超面白いです。アイデア一本勝ちの作品。