高校生エクソシスト

大粒ラムネ

第1話 夜の学校

タッ、タッ、タッ、タッ、


自分の足音だけが廊下にこだまする。

すでにあたりは真っ暗で、常夜灯がなければ一寸先も見えなかっただろう。しかし、この常夜灯が逆に不気味な雰囲気を醸し出している。


タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、


相変わらず、廊下には一人の足音しか聞こえない。

それもそうだろう。こんな時間に学校にいること自体がおかしいのだ。俺が勝手にセルフ肝試しという異質な状態を作り出しただけにすぎない。


階段を登り、自分の教室に向かう。

階段は中庭が一望できるように全面窓になっているため、廊下よりは比較的明るくなっている。

しかし依然として光量は足りていない。こんな真っ暗な中で足元の見えない階段を登るというのは少々危険な行為だ。

俺は自然と手が手すりに伸びる。


手すりの冷たさを感じながら一段1段着実に登っていく。


パチッ


「っ?!」


不意に手に痛みが走り、思わず手すりから手を離す。

なんだか違和感があるな、、

しかし静電気だと気づくと、また教室に向かって歩みを進めていった。


教室はもちろん電気がついておらず真っ暗だった。

誰もいない教室というのはなんだか無性にワクワクするな。

俺はあえて電気をつけない。だってこっちのほうが楽しいから。

ちょっぴり恐怖を覚えながらも、頭ではこの状況を楽しんでいた。


迷わずに自分の机に向かうと椅子を引き、机の中に手を挿入する。

(なんだか真実の口みたいだな)


「?!」


俺は衝撃のあまり手を即座に引き抜いた。

たった今、机の中に入れた手がなんだかヌメッとしたものに触れた。


「俺は学校じゃオナってねえぞ・・」


一人でいるときというのは独り言が出やすいものだが、驚きのあまり大きめの声量で出てしまった。

だが驚くのも無理はない。俺の手には確かになにかの粘液のようなものが触れたのだ。


「机の中にカエルでも入ってんのか。もしくは誰かが机にペペ塗りたくったとか・・」

「いや、イジメにしたって度を超えている。それにそもそも俺はいじめられるはずがない。だって友達いないから。いじめを受けるレベルの面識すらないから。」


恐怖のあまり独り言が止まらない。だが、このまま帰るわけにも行かない。

俺は恐る恐る膝を曲げ、机の中を覗き込んだ。



瞬間、俺は何かと目があった。



気づいたときにはその場から走り出していた。

ズルっ

勢いのあまり体勢を崩しそうになるも、手を使ってなんとか姿勢を保ち、加速する。

面倒だからと靴下で登ってきたことが今になって悔やまれる。


「はっはっっ・・」


日頃の運動不足もあるが、何より突然全力疾走したせいで息が切れ始める。

しかしもうすぐ階段だ。この中央階段を降りればもう玄関に出られる。


俺は階段の上から全力でジャンプし、手すりを使って即座に体の方向を変える。

手すりが丸くなってるやつで助かった。



しかし、あと1階というところで油断してしまった。

ガッ!!

頭に激しい衝撃を覚え、そのまま滑っていく

勢いに乗りすぎたことで手すりを掴む手が間に合わなかったのだ。更に靴下だったことも相まって階段からも離れるし、頭を強打した。


急いで立ち上がろうとするが、足は滑るし頭は痛いしと上手く立ち上がれない。

「急げ、急げ、いそげ、」


体制も整えず、よろけるように走り出す。こんなことではまた直ぐに頭を打つだろうが、手すりにさえ掴まれたら問題ない。そうしたらあとは降りるだけだ。


不意に視線が上がる。

何となく、嫌な予感がしたから。


その予感は運の悪いことに的中してしまう。


月明かりがのせいで逆光になりうまく顔は見えない。

しかし、そのギョロッとした赤眼だけははっきりとわかった。さっき机の中で俺と合った目だ。

「そいつ」の背中からは大きな羽のようなものが生えており、頭には2本の角が生えている。まさに伝承の悪魔の形そのものであった。


そして、悪魔の持つ特徴の一つ、「邪視」も健在であった。


「ガフっ・・」


不意に咳が出る。


ビチャビチャ・・・


それと同時に口から止めどなく血がこぼれ、地面が真っ赤に染まる。

直感でわかる。俺は今まずい状態だ。

つとめて冷静なつもりではいるが、体は恐怖のせいで言うことを聞かない。

足はガクガクと震え、さっき打った頭が熱を持ってきていることがはっきりと感じられる。


「ゲホッゴホッ・・」

咳も止まらないし血も止まらない、足元には真っ赤な水たまりができる。


やつは一歩一歩階段を降り、こちらに近づいてくる。


そしてその手が俺の首にかk・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「っはぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」

俺は飛び起きた。

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