第11話 俺とVOCALOID


俺は翔太にミコとの事を全て伝えた。実体を持ったミコと出会ったこと、ミコに告られたこと、ミコを大舞台で歌わせられるように共に曲作りを頑張ったこと、、、時間にしてほんの数週間の出来事であったのに、あまりにも濃い数週間であった。


俺は翔太に話している最中に、ミコとの日々を思い出しぽろぽろと涙が出てしまった。


翔太はそんな俺の話を馬鹿にせず、真剣な顔で聞いてくれた。


「笑わないのか?こんな馬鹿な話?」

「信じるよ、雄大が嘘泣きしてるようにも思えないし」

「そっか、、ありがと」


自分で語っていてもまるでおとぎ話のような突拍子もない話だったので、こんなすんなり信じてくれるとは思っていなかった。



「で、雄大はさ、どうしたいわけ?」


一呼吸おいて、翔太が切り出した。


「どうしたいって、俺はミコに戻って来て欲しいに決まってる!」


「なるほど。でも、それが無理そうだったからボカロPをやめようと思ったんじゃないの?」


「うっ、それは、、そうだけど、、、」


「そもそも雄大は何のためにボカロ作ってたの?」


「ミコを使った曲でヒットを飛ばすために…」


「じゃあ、なんでボカロPをやめたんだ?」


「だって、もうミコはいないし…」


「ふざけるな!!」


翔太が見た事ないような剣幕で怒鳴った。


「しょ、翔太?」


「ミコちゃんはいるだろ!お前のパソコン中に!!実体が無ければ、それはミコちゃんじゃないのか?お前が今まで作ってきた曲のボーカルを歌ってきたのはミコちゃんじゃないのか?」


翔太が続ける。


「確かに実体は保てなくなったかもしれない、でもお前が、、、お前が曲を作り続ける限りミコちゃんは存在し続けるんだよ!!」


俺は翔太に言われてハッとした。ミコは実体が消え、元の音声ソフトに戻ってしまったのかもしれない。でも、それはミコの消滅ではない。ミコは俺が曲を作り続ける限り、最高の歌声で応えてくれるではないか。


「ありがと、翔太。俺、大事な事を忘れてたよ」


「おう。ミコちゃんと約束したんだろ、大勢の観客の前で歌わせてあげるって。」


「うん。俺、ミコのためにももう少しボカロPとして頑張ってみるよ」


ーーーーーーーー


「週刊VOCALOIDランキング」これはその週で人気だったボカロの曲をランキング形式で表したものだ。




俺の新曲、『もう戻らない君へ.DIVA奏音ミコ』は10週連続で1位を獲得し、わずか1ヶ月で伝説入りを果たした。イラストはもちろんmizuhoさんだ。そして未だ勢いは衰えず、11週連続での首位も見えつつある。

そしてなんと、その爆発的な人気から、某ボカロフェスでサプライズとして俺の曲を演奏するとことが決まった。もちろん、これがミコの初舞台である。

俺は心の底から喜んだ、ミコとの約束を果たせたのだから。


俺は部屋でフェスに向けてのアレンジを考えていた。長時間作業に没頭していたためか、尿意を感じ慌ててトイレへ向かった。


「ふぅ〜、すっきりした」


部屋へ戻り扉を開けると、そこには1人の女の子が立っていた。

俺の愛用するVOCALOIDのパッケージに書いてある女の子が…


女の子はクスリと笑い、言った。


「マスター、私と恋人になって」


「俺、言ったよね。恋愛っていうのはお互いに好意があるから成り立つものだって」


それを聞くと女の子は少し寂しそうな顔をした。俺は続けて言う。


「だから、、、」

 

「俺と恋人になってください!!」


女の子はあっけにとられたような顔をしていたが、徐々に顔を綻ばせ、仕舞いにはとても嬉しそうな笑顔をして言った。


「もちろん!!!!」


      ====完====



最後までお読み頂き大変ありがとうございます。

日常をもう少し書けば良かったなぁ…と少し後悔してたりするので、次は自我を持ったVOCALOIDとボカロPの日常を書こうかなとぼんやり思ってますので、よろしくお願い致します。

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うちのVOCALOID™が自我を持ちました 93音 @otohimata

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