第4話 曖昧な結末

 僕はその日以降、管理人室の前を通るたび、僕が聴いたラジオの話をしようと管理人さんを探していた。


 しかし、管理人さんは待てど暮らせど出勤してこない。


 共用廊下にゴミが溜まりだした頃、ようやく新しい管理人さんが出勤してくるようになった。


 新しい管理人さんに前の人はどうしたのか聞くと、


「脳卒中で急に亡くなられたそうですよ」


 と教えてくれた。


 管理人さんが出勤して来なくなったのは、あのラジオを聴いた日のちょうど翌日から。


 僕には、無関係とはどうしても思えなかった。だけど、おじいさんの身に何があったか、知るすべはない。


 あれから四半世紀が過ぎたけど、いまだに時々思い出して考える。


 あの日消えた管理人さんと、謝られた僕の差は一体なんだったのだろうと。

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血だまりとラジオと彼の声 hisa @project_hisa

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