第3話 ラジオと謝罪

 それから数日は、何事もなく過ぎたと思う。


 その日の夜は、勉強しながらいつものラジオを聴いていた。


 ふと、先週の事件の夜にも聴いていたラジオであることが頭の片隅をチラリとよぎったりはしたが、それで聴くのをやめるほど、僕の神経は細くなかったらしい。


 流行している音楽の途中で、雑音が入って何も聴こえなくなっても、まったく気にしていなかったように思う。


 だけど、急にその雑音が消えて、部屋が静寂に包まれた瞬間、強烈な違和感を感じて背筋に寒気が走った。雑音で音楽が聞こえなくなるのは理解できるが、雑音が消えた後、音楽が聞こえないのはどう考えてもおかしかった。


 ならばラジオの故障か何かか? 僕はラジオの電源ランプを確認しようと顔をあげ――――


「ごめんなさい――――」


 はっきりとした男性の声を聴いた。


 言葉を失って混乱している最中に雑音が戻ってきて、その雑音がおさまると、また最初の音楽に戻っていた。


 そこからはあまり記憶にないが、気が付くと台所で洗い物をする母親の横で、早口で「やばい」を連呼していたことは覚えている。


 母親は僕から事情を聞くと、


「そりゃあんた、今日は初七日やんか。謝られたんやったら害はないから、安心しいや」


 と笑っていた。確かにその通りだろう。うらめしやと言われたわけではなく、ごめんなさいと言われたのであれば、許せばそれで終わりの話だ。


 僕は納得しつつ、管理人さんのところにも彼が挨拶に来たのか、ものすごく気になりはじめていた。

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