あつまりは
鈴乱
第1話
「ここにいるのはな……」
そう言って彼は声をひそめる。
「劣等種ばっかりさ」
「劣等種?」
「ばか、お前、声がでかい」
「え、あ。ごめん」
彼は慌てて周囲を見回し、誰も気に留めてない様子を確認してから僕に向き直る。
「用心しろ。ここにいる奴らは世間では『劣等種』と言われてるが、実力はその対極にある。プライドが少しでも傷つけば、何をしでかすか分からんぞ」
『君が言ったんじゃないか』と思ったけれど、得策じゃないと思って黙っておいた。
「ここは、何なの。彼らを集めて何をするところなの?」
僕が尋ねると、奴は素っ頓狂な顔をした。
「俺は知らねぇ」
「え、でも、君ここの一員なんでしょ?」
「一員じゃなくて、リーダーの代理な」
「それなら、何するかくらい知ってるんじゃないの?」
「知らねぇって。知らせるも知らせねぇも全部決めるのはリーダーだから」
「へぇ。そのリーダーって人、まるで王様みたいだね?」
「王様か。確かに。すげぇ人だからな、あの人は。それに皆に信頼されてる」
「みんなに?」
「そうさ。だって、俺たちみたいな落ちこぼれをどうにかしてくれようとしてるんだぜ?」
「……それは、そうかもしれないけど」
僕には途端に心配になってきた。この人、そのリーダーって人に騙されてるんじゃないのか?
「リーダーはすごい人なんだよ。俺たち、何も出来ねぇし、取り柄なんてないだろ? ここにいる皆、社会ってもんから爪弾きにされて、家族からも見放されてさ、行くとこなんてなくてよ。でも、そんな俺たちを拾ってくれたんだぜ? すげぇ人だろ」
聞きながら、僕の疑いは深くなる。
『本当に、騙されてるんじゃ……』
「そんなにすごい人なら、会ってみたいなぁ。そのリーダーさんは今日は来ないの?」
「来るはずだぞ。ただ遅くなるって聞いてる」
「そっか。じゃあ、待ってみようかな。僕のこと、その人に紹介してもらえる?」
僕が言うと、彼の表情がパァッと明るくなる。
「もちろん! リーダーも喜ぶと思うぞ!」
「よかった。僕もそのリーダーさんに会うのが楽しみだよ」
「あぁ、きっとリーダーに会って話せば、俺の言ってることがすぐ分かる!」
「うん」
うなずきながら、僕は心に決める。
『ここがマトモなところなのか、僕の目で確かめなくては』
目の前でニコニコしてる親切で単純なこの人が、もし悪い人を尊敬すると言っているのなら……
『どんな手を使ってでも、目を覚ましてもらわないと』
あつまりは 鈴乱 @sorazome
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