第5話

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ゆーくん、オムライスおいしい?」

「うん、おいしい」


 無邪気にオムライスを食べる息子は、そのオムレツが、たくさんの卵を破壊つぶして作られていることに無頓着だ。


「ゆーくん、お口、ふきふきしましょうねー」

「んー」


 わたしはゆーくんの口を拭き、この子に関われることの幸せに浸る。口の周りを血のような赤いケチャップまみれにしても、わたしは何度も、この子のケチャップを拭きとって、この身が尽きるまで何度も手を汚すのだろう。


 ここからさきは、永遠につづくイタチごっこだ。

 それでもいい。

 わたしはこの子の前途が、明るい未来であることを望む。


 どうか「生まれてはいけない人間」だったのだと、己を否定することのないように。

 そして、願わくは、わたしがこの子の将来のになりませんように。

 何者でもなかったわたしを母親として産んでくれて、なにも知らなかったわたしに、幸せを教えてくれた青い鳥ゆーくん自身が幸多さちおおからんことを、わたしは願ってやまないのです。


【了】

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ヒヨコ・ニワトリ・サギ・カッコウ・オナガ・ガン……そして青い鳥 たってぃ/増森海晶 @taxtutexi

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