第4話
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大切な話があると、義両親が好みそうな料亭に、
「本日は、お時間をとらせてしまって申し訳ございません。どうしても、息子の将来ために、話し合いをしなければならないと思いまして、この場をお借りしました」
わたしは綺麗な角度でお辞儀をして、彼らが余計な
「ずっと引っ掛かっていたのです。なんで、あの浮気相手はわざわざわ家に乗り込んできたのか。この時点で、わたしは托卵されていると気づいていない、知らない振りをしたまま
あくまでわたしは、最近になって托卵に気づいた
「彼女はあなたじゃなくて、息子を取り返したかったのですね」
おそらく女性側に、なにかしらの事情の変化があったのだろうけど、詳しいことは確かめようがない。
「う、うそだ。知らない。オレは知らないぞ。それに、それ以前に、オレは毛髪なんて提出してない」
「別居の際に、わたしの私物を送ってくれたでしょう。確認したら、夫婦で共有していた日用品まで入っていたじゃない。使う気にならないから、箱に入れっぱなしになっていたのが、かえって良かったわ。わたしたちが使っていたブラシを提出したら、三人分の毛髪のサンプルが取れたのよ。……浮気相手も、あのブラシを使っていたのね」
わたしが説明すると、
「……あの、女ぁっ」
書類を黙読した
「――つまり、DNA鑑定の結果、私達が孫だと思っていた
ぎろりと義父は、鷹の一睨みのごとく不詳の息子に向けられる。
「はい。ですが経緯はどうあれ、わたしは
わたしはバックから離婚届を取り出して、土下座した。
「どうかっ! どうかっ! お願いします、離婚してください。
畳に額をこすりつけて、なんどもなんども懇願する。
義両親はプライドの高い人間だ。自分たちが赤の他人を孫と思い込み、嫁に来た女性を自分たちの不手際に巻き込んだうえで、息子は浮気相手にいいように利用されたのだ。
「これが、君の選択だとするのなら尊重しよう。慰謝料・教育費は
「あなたっ!」
声を荒げる義母を制して、義父は同情をこめた目でわたしを見た。
「感謝します。
勝った。
まさか、援助まで約束してもらえるとは思わなかったから大収穫だ。
「お、おまえは、それでいいのか? 自分の人生なんだぞ?」
戸惑う
そして、ゆーくんが「うまれちゃ、ダメだった?」と問いかけたとしても、めんどくさそうにやり過ごそうとするのが想像できて、わたしは平静ではいられなくなる。
「だとしたら、
淡々と反論するつもりが、次第に感情が昂って両目に涙があふれてくる。一応は感謝しているのだ、
「おい、そんな言い方っ……」
――パシッ。
「あなたっ! なんてことをっ!」
「申し訳ない! あなたにそこまで言わせるなんて我が家の汚点であり、それ以前に人間のクズだ。どうか愚かな私たちを許してほしいっ!!!」
それは一瞬だった。義父が
畳に並べられたそれぞれの三つの頭を見て、彼らは本当に家族だったのだと、わたしは妙に納得してしまった。
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