たってぃ/増森海晶

　上司に誘われて、斎藤は会員制のカフェ【狗カフェ（いぬカフェ）】に入会した。 　特殊なサービスによって、斎藤はストレスから解放されるのだが――。

　先祖がドラゴンテーマ―だったことで、底辺テイマーの代名詞【スライムテイマー】の素養を持って生まれたウィリアムは、家族と周囲から見放されて不遇の幼少期を送っていた。 　そんな彼を…

　幼い頃、茂みの中で、エイリアンの卵を発見しました。 「お嬢ちゃん、この卵に近づいちゃいけないよ。悪い子供を食べる、こわーい怪物が生まれてくるからね」 「え、悪い子を食べちゃう…

幼い頃、私は月を破壊した。

――迷子になって、泣いてる女の子を発見した。

　友人のために連帯保証人になろうとした男。 　男の妻は両親の借金で苦労した経験があり、昨晩ケンカしてしまった。 　仕事の帰りに、妻と仲直りしたいと思い悩んでいると妻からメールが届…

　お母さん、びっくりしたんだよ。 　役所から電話が来て、ちょうどおじいちゃんとおばあちゃんが留守だったから、かわりに僕が出たんだ。 　そう、おじいちゃんがちょっと認知症になっちゃ…

　慈悲深い国王に保護されて、《《我ら》》は生き延びた。 　与えられた土地。与えられた平和。与えられた当たり前。 　あぁ、本当に束の間だった。 　戦火ですべてを失った私が、妻を娶り…

　臨終の病室にて、死にかけの老婆は「あと、もう少しだけ生きたい」と家族に言った。

　成り行きで心理テストを受けることになった小西は、三枚のイラストを選ぶことになった。 　一枚目は、石畳の道が地平線へと伸びている砂漠のイラスト。 　二枚目は、麦畑が広がる、む…

　ザー……ッ。 　雨だ。雨が降っている。 　私は布団の中で、身体をもぞもぞさせながら目を覚まそうとした。

　わたしは、小さいころから、なにかとよく物を盗られました。 　どうやら他人の目には、わたしがとても無害な存在に映るそうなのです。 　ある日のことです。 　わたしの財布から、10…

　21××年 　人類に反旗を翻したAIとの戦争は、人類の勝利で幕を閉じた。 　なぜこんなことが起きたのか？ 　圧倒的不利な戦況を覆して、なぜ人類が勝利できたのか？ 　平和になった…

　ナノテクノロジーの発達によって、コロナが収束した未来。 　日本は【山田太郎《やまだたろう》】で溢れていた。 　家から一歩でも出たら【山田太郎】。 　通勤ラッシュに溢れる【山…

体を壊して十年ぶりに地元に帰ったわたしは、母のすすめで近所の桜を見に行くことにした。 そこで桜の木の下にタイムカプセルを埋めたという奇妙な男に出会って――。

「そうだ！　インドに行こう」 「マジか」 　同僚のAは、よく海外を旅行する。 　だが目的地は、その時その場の思いつきであり、Aは旅行すること自体が目的であって、現地で何かをする…

会社に勤める私は限界を迎えて、寝たきりの生活になった。 そこに見舞いへ来たのは、5年前から交流が続いている門倉相馬（かどくらそうま）。見舞いの品から人魚姫の話題になり彼は私に言う…

　七夕の日にしか会うことができない――織姫と彦星。 　天帝によって引き裂かれた運命の恋人たちは、永い刻を経て反撃に出る。

　わたしはゆーくんの母親。 　ゆーくんの幸せならなんでもできる母親。 　それが人の道に外れているのだとしても、わたしは息子の幸せを願ってやまない。 ※レーティングは念のためです。

恋人のあかねはケーキの苺を最後に食べる。 料理を味わうのは大切なことだが、最後に味わうのは【好きな味】であることが肝心らしい。 彼女が望む、最期の味は――。 ※レーティングは念…

かつての勇者の恋人【聖女 マリス】 彼女の本当のメッセージが勇者に伝わるかは神のみぞ知る。

　これはなんのことはない、病院の怖い話なんだ。 　高校生の僕が、病院に入院して、そして怪異に遭遇した。 　内容を要約すると、雪女の話に近いんだけどきいてくれ。

　なんでも願いを叶えてくれる神様に、村の若者は願いました。 「神様、お願いします。みなの記憶ごと俺の存在をこの世界からすべて消してください。俺、なにをやってもみんなに迷惑をかけ…

※暴力描写あり 　あの日、私が落としたものは、【戻ってくるもの】だったのか、それとも【もう二度と戻ってこないもの】なのか。 　命を拾い、人として大切なものをその場に落としてきた…

　幸せになりたいと、思ったことないのだが。 　最近ひどい、この肩こりをなんとかできないのだろうか。 　フリーのカメラマンである野上 明史(のうえ あきふみ)は、仕事で訪れていた…

　七月に入ったあたりから、故郷の風景を何度も思い出し、胸騒ぎに近い不快感がざわざわと全身を駆け巡るようになった。 　一連の不快感が故郷にあるという確信が日に日に高まり、暴いてやろ…

食べることが大好きの田端 葉子（たばた ようこ）は、みんな同じ味に感じる悩みを抱えていた。同僚の三浦のアドバイスで悩みから解放されたが、三浦は後悔することになる。

　名前が出口なのに、出口がない。 　私、出口 みゆき(でぐち みゆき)は同棲している婚約者、中江 英伸(なかえ ひでのぶ)に監禁されている。 　終わりのない暴力と絶望の日々に、私…

　海老沼 光――という、自分の名前が生理嫌悪を催すレベルで嫌いだった。 　結婚して名字を変えたい。だけど、だれでもいいわけではない。 　ハイレベルな男と釣り合うために、努力する私…

――慶応元年《けいおうがんねん》　冬の京。 　小雪がちらつく路地裏で、身なりのいい女が浮浪者の男に頭を下げていた。 「桑峯藩【元剣術指南役】の秋山直二様……。どうか、どうか、新選…

　NIJIi《ニジィ》というアプリが発端で、色調不良症候群《プアカラー・シンドローム》という病気が蔓延している世界。 　感情を色彩であらわすNIJIi《ニジィ》に強い影響をうけた…

駅までの気が遠くなるような道。 へとへとになりながら、わたしはコンビニに辿り着いた。

　魔王を倒したが、人間の醜い本性を目の当たりにして勇者たちは精神を病んでいた。 　そんな中、遊び人のルカが提案する。 「ねぇ。相談なんだけど、記憶を消してやり直すことにしない？…

　駅から歩いて10分のマンション【ブルーコクーン】にオレと千紗は住んでいる。 　オレの部屋は505号室、千紗は506号室。いわゆるお隣同士の幼馴染。 　中学までどこにいくのも一緒…