高島美優(美優視点)

『シュウと付き合うことになった。ありがとね美優!』

『おめでとう! ……で、いいの? 複雑なんだけど、私』


『美優には感謝している。普通ならありえないような私たちの気持ちを汲んでくれたのだからな』

『盛大に感謝してね。シュウ君を独り占めしたいところを二人に分けてあげるんだから』


『もちろんだよー! ホントーに感謝してる! ありがと美優!』

『……それで? 付き合うことになって、それからその後は何かあったの?』


『今度一人ずつデートに行くことになった。有紗、私、美優。それぞれだ。一番都合をつけるのが難しい美優に日程は合わせるつもりだから、遠慮なくデートの日を指定してほしい』

『あたしと玲は美優が日付決めた後被らないように決めるからさ』


『ふぅん……シュウ君の一番は私っていう約束は一応守ってくれる気はあるんだ?』

『当たり前じゃん! シュウにもはっきり言われちゃったし。美優が一番なのは変わらないけど、それでもいいならって』


『私たちは始めからそのつもりで話をしていたから特に反論もしなかったが』

『うんうん。それならオッケーだよ! 私の休みは後でカレンダーで共有しとくね! 二人はその日以外ならどこに入れてもらっても大丈夫』


『オッケー! ありがと美優!』

『感謝する。……ところでシュウとデートに行くときってどんな服装で行けばいいんだ?』


『え……玲ちゃん本気で言ってる? それ』

『玲……大丈夫?』


『し、仕方ないだろ! シュウ以外の男子と出かけたことなんてないし、デートなんてしたことないんだから!』

『有紗……これは玲ちゃんがデートに行く前に一緒に服を見繕ってあげないとダメだね』


『そうね美優。……ていうか別に今日みたいな服装でも問題ないと思うんだけど』

『それは……有紗が言うのならそうかもしれないが……』


『玲ちゃん……シュウ君とデートに行くってことは、一緒に歩いてる玲ちゃんの評価がそのままシュウ君の評価に繋がるんだからね? そこのところ大丈夫だよね?』

『自分で言うのもなんだが、これでも見てくれは悪くないと思っている。美優と比べられるとどうしようもないが……』


『……まぁなんだかんだ言って玲ちゃんはへましないか。有紗も舞い上がりすぎて変なことしないでよね?』

『し、しないし! もしかしたらキスまでいけるかも? くらいにしか思ってないし!』


『はぁ……ま、いいか。じゃあ二人とも、デートどこ行くかとか考えてる?』

『それは――』


……

…………

………………

……………………

…………………………

………………………………











 スマホの画面を落として枕元にポイっと放り投げる。ベッドから一番近い位置に置いてあるシュウ君の写真を眺めながら、こみ上げてくる笑みを嚙み殺す。


 多少予定とは違ったけど、最終的には私の理想に近い形に収まった。


 シュウ君にも、有紗と玲ちゃんの二人にも私は大きな大きな貸しを作った。私が一歩引いて妥協したことで、シュウ君はあの二人を受け入れたし、あの二人はシュウ君に受け入れてもらえた。


 シュウ君は私という恋人がいるのに二人のことを受け入れたっていうことに負い目を感じている。私がシュウ君に二人のことを受け入れるようなことを言って送り出したのに、シュウ君はそのことには一切触れずに私に謝ってきた。


 ファミレスから帰ってきたシュウ君は、可愛い女の子二人と新しく付き合い始めたっていうのに暗い顔をして、私の顔を見るなりちょっと泣きそうになりながら謝ってきたのだ。


 ハーレムが男の夢だとか理想だとかっていうことを言うつもりは全くないけど……ハーレムを手に入れて泣きそうになりながら謝ってるのもどうかと思う。可愛いからいいけど。


 シュウ君の部屋でシュウ君を抱きしめて「大丈夫だよー。私が二人のことも考えてあげてねって言ったんだから!」って言いながらいっぱい慰めてあげた。こんなに情けない姿のシュウ君を見るのは初めてで、イケない感覚が背筋をぞわぞわ這い上がってきて大変だった。


 可愛いシュウ君は、こうして私におっきな負い目ができて、その負い目から絶対に私を一番に扱うっていう約束を破らなくなったはずだ。シュウ君の性格からしてそう確信が持てる。


 有紗と玲ちゃんに関しても、私が二人のことを受け入れたっていうアドバンテージがある限り、私と同じところまで上がってくることは決してない。


 だから、これでシュウ君の一番はこれから先もずっと私だし、私の一番もずっとシュウ君でいられる。二人との関係もなくなったりしなくなったし……うん。万事オッケーってことだね。


 ……まあ、本音を言えばやっぱり私はシュウ君と一対一のパートナーになりたかったけど、その私のわがままを通して今よりもシュウ君に悲しい思いをさせちゃったら私は私を許せなくなっちゃうし。


 一対三の関係になっちゃったけど、この三は私を頂点に据えた三角形の力関係だから、妥協点としては上々だと思う。


 結局は、私は私がシュウ君のもので、シュウ君の一番にいられるならそれでいいのだ。そこがブレないことだけ確定させられれば、後はシュウ君の言うことはなんだって受け入れてあげる。


 夫の、旦那様のわがままを受け止めて叶えてあげて癒してあげるのも、妻の役目だもんね……?


 ね、シュウ君……♡

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