隣国のお姫様との縁談に訪れた貴公子が待ちぼうけを食らう間にすてきな時間を過ごす話。
あまり良い誉め言葉ではないかもしれませんが作者さんの基礎が強いです。まずはじめに気付いた強さは良い語彙。いたずらに難しい言葉を振り回すことなく読み易く、楽しい語彙。それから文章が凛々しい。語りが長々続かず歯切れよい。だからシンプルな展開がこんなに楽しいのだと感じました。小手先や突飛な仕掛けなしで優れている。
私は甘い恋愛の話が苦手です。ですがこの作品は甘くて楽しかった。この手のこの筋の話をこの精度で書かれていることに驚きました。ずっと書き続けてください。応援してます。
この物語は、一見して古典的なロマンスの装いを纏いながら、その核心には人間の内面的な美しさと外見の美しさの関係性に対する深い問いを投げかけている。
物語は、王子と王女の間に芽生える愛情を軸に展開されるが、その真髄は遥かに深い。
王女リナリーの顔にある傷は、この物語の中心的なメタファーである。
この傷は、彼女の内なる強さと勇気の証であり、王子アベルトが真の美しさを認識する過程を象徴している。
作者は、絶妙な筆致で二人の出会いとその結びつきを描き出している。
迷子の王子と案内を申し出る王女の初対面は、偶然の出会いに見えながらも、運命的なものとして描かれている。
王子が王女の顔を見ることなく彼女の内面の美しさに惹かれ、王女が自分の傷を乗り越えて王子を受け入れる過程は、読者に深い感銘を与える。
この物語は、外見の美しさが内面の美しさに比肩することはないという、普遍的な真実を見事に浮かび上がらせている。
王子アベルトの行動は、「見た目に惑わされず、人の内面を見定めるべきだ」という教訓を読者に伝える。
リナリー王女の傷は、彼女の過去の苦難を象徴し、それを乗り越えた彼女の強さと美しさを際立たせている。
この物語は、「愛とは何か」、そして「人を愛するとはどういうことか」について、読者に問いかける。
愛は外見の美しさに基づくものではなく、人の心の美しさ、その人が持つ勇気や優しさ、そして愛する人のために自分自身を犠牲にする能力に基づくものである。
この物語は、美しいプローズで綴られた、愛と受容についての深い洞察を読者に提供してくれるだろう。
物語の舞台は中世ヨーロッパ辺り。
作者が用いた、文体や言回し等の表現で、その雰囲気が良く表せていたと思います。そのお陰で、読み始めて直ぐに物語に入り込むことが出来ます。
また、起承転結がしっかりと順序立てて組み立てられていてとても読みやすかったです。
ここで、内容を明かすことが出来ないのが心苦しいですが、実際に読んで頂きたいので、ここではしません。
約5000字と言う文字数で、ここまでの完成度は本当に凄いと思います。
なのに、あまり星がついてない!というか、読まれてない!
なんで、何でなんで~!
本当に、鉱山に眠っている宝石のような作品なので、是非、是非とも読んでみて下さい!