紗季の告白

本屋の入り口、真正面の一番目立つ棚に本日発売のファッション誌の表紙を飾る二人の笑顔があった。


ユーリア・イリイーチ・ヨシムラと姫嶋翔子、モデル名は吉村悠里と翔子どちらも新人ながら人気ファッション誌の表紙を飾るに相応しい容姿を備えていた。


SNSでも話題になるほどの人気なんだが当の本人たちは普通に高校生生活を楽しんでいた。


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「佐久良さん、今日は紗季の初仕事ですよね。この前のスタジオですか?俺、見学に行ってもいいですか?」と担当の佐久良美鈴さんに尋ねると「そうね、ユーリア君がいたほうが紗季さんはのびのびできるかもね、いいわ、見学しても」と言ってくれたので翔子と見学に行くことにした。


翔子と事務所で待ち合わせして紗季がスタジオ入りする少し前にスタジオに入った。


以前、俺が撮影した時と違ってスタッフが多いような気がしたが、「紗季は美少女なので事務所もそれなりに力が入っているんじゃないかな」と翔子が言った。


最近、人気雑誌の表紙を飾った二人が見学に来たという事でスタジオの雰囲気も変わった気がした。


「紗季は未だ控室かな?佐久良さん見てきていい?」翔子の言葉に佐久良さんは「いいわ」と了承したが俺は流石に女子の控室なので遠慮した。


暫くして、紗季と翔子が控室から出てきたが(えっ、お前、誰?)ってレベルで紗季が見違えた。


恥ずかしそうにしているのは変わらないが、やはり元が良いので輝きが違う。


「美少女が美人に、うん、大人っぽくなったな」正直、何が言いたいのか自分でも解らなかった。


「さすがに、ユーリアでも驚くレベルだね。紗季は美少女だと思っていたけどここまで変身するとはね、私も負けられないな」翔子もかなりの美人だがそれより上か。


スタッフの数が多いのは事務所の力の入れようが違うからってことだけど、そういえば下っ端のスタッフというよりスーツを着た人が多いような気がする。それなりに力のある人たちなのだろう。


佐久良さんの話だと、この前俺の撮影の時に紗季を撮ったスチール写真が業界で出回っているらしい。


「ユーリア君」紗季が不安そうな顔で俺を見てきたので、「化粧とか髪型崩れるとだめなので頭撫でてあげられないけど、ここから紗季のこと見てるから頑張ってこい、後でうまいもんでも食べにいこう」と言ってサムズアップしておいた。


「私が食いしん坊キャラみたいに言わないでくれる」紗季はと擬音が聞こえてきそうな怒り方をする。


「じゃあさ、ユーリアの家でまったりしよ」翔子も一緒に行くことになっているらしいが、紗季が賛成したので俺の家で三人でおうちデート確定のようだ。


何かデリバリーでも頼んでおくかと思っていたら、紗季が寄ってきて「スーパーで買い物して帰ろうね。ダーリン」何だこの可愛い生き物は(ダーリン、頂きました)今日のご飯は紗季と翔子の手料理確定。


偶に紗季が色っぽい目をしてくるんだよな、今日はモデルモードの化粧も相まって色っぽさが3乗ぐらいに膨れ上がってる。



いい感じで紗季の緊張も解けたみたいで順調に撮影が進んだ。


「のびのび撮影してて、新人に見えないな」撮影している紗季はキラキラしていた。


「ほんと、誰かさんのおかげで、紗季はまだまだ成長しそうね」翔子が紗季を見ながらそんなことを言ったが、翔子だって新人から全国紙の表紙を飾るくらいなんだから末恐ろしいと思う。


「翔子もまだまだこれから素敵な女性になるよ俺が保証する」と言っていつものように頭を撫でた。


最近、よく二人の頭を撫でている気がする。


「ちょっと、見ててね」そう言って翔子が肩に頭を載せてきた。


その瞬間、「紗季さん今のとこ、もう一回撮り直しね」紗季にダメ出しが出た。


「うふふ、ごめんね紗季」紗季に聞こえない声で翔子が言ったが、紗季を挑発してるような行動に明らかに怒った顔で「翔子!何してるんですか?」紗季は口の動きだけで抗議してきた。


翔子も口の動きで何かを言っているようだけど俺からは見えなかった。


「紗季の弱点はあなたね、どうしようかな、私も諦める気ないし困ったものね」



その後の撮影は順調に進み無事に終了した。



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帰り道、佐久良さんにこの前、紗季と逢ったスーパーまで送ってもらい三人で買い物をしようと店内に入ると、夕方少し前で夕刻市とかいうタイムセールで客が大勢いた。


紗季と翔子で今日はハンバーグとクリームシチューを作るということで食材を確保、早々に混雑する店内から立ち去った。


目的地は俺の家なので5分も歩けば着くのだけど美女と美少女という組み合わせは

自然と視線を集めるようで買い物客の男性陣が食い入るように見てきた。


人に見られ慣れてる翔子はともかく、紗季もついさっきまでカメラを向けられていたせいか視線など意識せずという感じだったが、俺は他の男性陣が二人を見る目に嫌悪感を抱いてついつい殺気の籠った視線を送ってしまった。


「ユーリア、そんなに睨まなくても…、あの人たちは何もしないわ」翔子は笑いながらそんなことを言ったが、人の視線に晒されて今の自分が出来上がっているせいか、悪意のある視線や下卑た視線には敏感になっている。


その割にモデルという視線を集める仕事をしているから矛盾するな。


そんなことを考えながら帰り道を歩いていると前から、見覚えのある老人が歩いてきた。


紗季が先に気づき「お、おじいちゃん」と言ったが、この老人こそが俺を病院送りにした老人だった。


「あ、あなたはヨシムラさん、この前は申し訳ないことをしました。今、体調はどうですか?紗季に話を聞いてひょっとしてとは思っていたんですが。まさか孫の想い人とは世間は狭いですね」という単語が出てきたが、それを聞いて紗季が真っ赤な顔をして怒っていた。


「おじいちゃん、何を言ってるんですか。私、ユーリア君をなんて言った覚えありませんけど」


「いつも楽しそうにユーリア君のことを話してくれるじゃないか」


「紗季さんの想い人かどうかは知りませんけど仲良くはしてもらってます。体調の方はもう完全復活です。ご心配頂きありがとうございます」と言葉を返す。


「同じく紗季さんと仲良くさせていただいております姫嶋翔子ですわ」久々お嬢様モードの翔子様だ。


「これはこれはご丁寧に、綺麗な娘さん。今後も紗季と仲良くしてやってください。高校入学してすぐに両親が離婚して紗季はうちで引き取ることにしたんじゃが、暫くは死人のような顔をしてたから心配してたんだが、ここ二週間くらいかな、ユーリア君がどうこう言いだしてから依然の紗季に戻ったみたいに明るくなってな今じゃ活き活きしておるので何かあったなと思っておったんじゃ、良い友達を見つけたな」


「おじいちゃん、これからユーリア君の家に行ってきます。晩御飯も食べてくるのでおばあちゃんにそう言っといてください」


「はいはい、何なら泊っておいで女子トークでもピロートークでもしておいで」


「また、何を言ってるんですか」紗季はプンプン怒っているが、面白いおじいさんだな。


「でわ、ヨシムラさん紗季を頼みます」そう言っておじいさんはスーパーの方に歩いて行った。



俺の家に着いて、三人で晩御飯の用意をした。


それぞれが役割分担して、ハンバーグもクリームシチューもあっという間にできた。


食事の後、かたずけを済ませてリビングで休んでいた。


「紗季、本当は祖父母の家に住んでるんだ。両親が離婚したのも聞いてた」翔子がそう言うと紗季は「嘘ついてごめんなさい。ユーリア君に黙っててって言ったの。また心配かけると思ったから、それと事故のこと、おじいちゃんが加害者だったこと黙っててごめんそのことも私知ってた。『友達部』もユーリア君の部活だから入ったの、あなたに興味があったから、モデルの仕事もそう、あなたの傍に居たいから、本当は、小さい頃から知ってたの、おじいちゃんの言う通りでユーリア君は私の想い人。でも、今はこの三人の関係が好きなの『友達部』も私の居場所だから」たどたどしいが感情のこもった言葉で紗季が告白する。


「そうなんだ。紗季なりに気を使ってくれていたんだな。ありがとう」


俺の部活に紗季が入って翔子が入った。


そのつながりが縁を結びモデルの仕事という共通の社会を手に入れることができた。


俺の居場所は間違いなく紗季と翔子の居る場所だし二人とも俺にとって大事な人でもある。




だから言うんだ「二人とも大好きだよ」



















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『友達部』へようこそ。~ボッチの俺が居場所を求めて~ 虻川岐津州 @pee_kar_boo

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