ヤサシいモノモドキの話
つきの
ヤサシいモノモドキの話
もっと思うままに 生きられたらいいのにね。
泣きたい時に泣いて。笑いたい時に笑って。 それでもそれができないのもまた、わたし自身の選択。
なんとも不器用な生き方。
◇◆◇
いつも思う。
自然にそのままで ヤサシイモノでいられるならば、どんなにいいだろう。
無理をするとか、意識するとか、何処かを
ヤサシいモノモドキのわたしは本当のヤサシイモノに泣きたいほど憧れる。
ヤサシイふりはできても突き詰めれば、それは嫌われたくないからとか、保身の気持ちからとか、そういうのが何処かにあるからではないのか。
わたしの優しさはどこか薄っぺらい。
気弱さと優しさは違う。
ほんとうに優しい人はしなやかに懐深く強い。
それでも、この卑小さが わたしのあるがままだ。 本当のヤサシイモノにはなれないけど ヤサシいモノモドキのわたしは、ふと考える。
わたしのそれがあるがままなら 、わたしはヤサシイモノになり損なったヤサシいモノモドキでもいいじゃないか。
わたしは ヤサシいモノモドキで生きていこう。 我慢したり無理したり、それでもそうしても、その道を歩くのだと決めたのがわたし自身なら。
完全なヤサシイモノにはなれなくても、ヤサシいモノモドキじゃなきゃ見つからないことだってあることを、ヤサシイモノモドキだから見つけられたことがあることを知っているのもわたし自身だから。
"ちいさな"というには もったいないほどの、"ささやかな"というには 胸の熱くなるような、そんな出会いの数々や、すれ違って行ったヒトが残してくれた笑顔や言葉を、こっそりとタカラモノみたいに心にしまって 時々 取り出しては眺めてみる。
祈ってくれるヒトの、願ってくれるヒトの、見ていてくれるヒトの想いが、ヤサシいモノモドキのわたしを 瞬間だけ
ヤサシいモノモドキは、結局やっぱりたぶんずっと、ヤサシいモノモドキのままだろう。
でも、でもそれでも、 この自分じゃなかったら逢えなかっただろうヒト達のことを想いながら、ちょっぴり負け惜しみしながらも、少し胸を張って思うんだ。
わたしはヤサシいモノモドキ。
永遠にヤサシイモノにはなれないかもしれないけど、でもそれでも貴方の側にいよう。
でもそれでも、貴方の側にいたい。
迷いながら軋みながら、傷つけ、傷つきながら、それでもそう思うんだ。
ヤサシいモノモドキの話 つきの @K-Tukino
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
いつかこんな冬の終わりに/つきの
★122 エッセイ・ノンフィクション 連載中 59話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます