表現とは物事を伝えること。けれど、そのやり方次第で、ロマンチックに装飾することも、嘘にならない程度に嘘をつくこともできる。無重力ピザ。「好き」という言葉。嘘ではないけれど、表現しきれなければ嘘になる。重力と言葉にとらわれやすい私たちは、だからこそ言葉を使ってどこまでも自由になるのだろう。…このレビューも、表現し切れないから嘘かもしれない。
良いところを引き出す広告と、真実をありのままに広める報道。どちらも伝えることに特化していますが、似て非なる職業ですよね。広告業界で働く「僕」は常日頃から言葉で着飾る、ちょっとした見栄っ張り。片やテレビ局の報道を生業とする彼女は純粋です。性格も価値観も違う二人のやりとりを通して、言葉の重みを感じていただければと思います。一度読んだだけでは味わいが足りない本作は、読み直すことで価値が増していきます。さりげない一文も、隅々までご鑑賞ください。