tale10
息子は逃げることを思い出した。
しかしレディバグはそれよりも早く笑った。
「逃げて。さぁはやく」
そう息子に告げたが、それが聞こえたかは息子にしかわからない。雨の中息子は数秒の間レディバグを睨み、その場から駆け出しいなくなる。
マリアはその様子を見て困惑の色を示した。
「レディバグ、なぜですか」
名を呼ばれ振り返ると、レディバグは頰にあった手を力無く落とした。
「逃げて。さぁはやく」
「に、逃げるなんて……罪を償わなければ……」
「逃げて。さぁはやく」
一際大きくマリアに言った。
しかしマリアは自身の血生臭い手に縋って泣いているだけ。
レディバグの瞳が霧のように濁り、時に晴れた空のように澄んでいく。
「マリア、将来何になりたい?」
「罪が……わたしには……罪が……」
レディバグは芝生に手をつくと、ぐんと顔をマリアに近づけた。
「ええそう。分かった」
雨はまだやまない。
しかしレディバグはワルツを踊り笑っていた。
完全に出した全身に傷もなく泥もなく葉音はいい五線譜を彩らせている。
今日、マリアは死んだ。
あんなに大事な2人であったのにレディバグは彼女の死を望み、素敵な未来が待っていたと言うのに。
ぴたりと立ち止まると、レディバグは横たわるマリアに向けてしゃがみこんだ。
「大きくなったら、何になりたいか決まった」
細く白い腕を伸ばすと、千切れた服から水滴が滴る。それはマリアの鼻先に落ち、頬を流れた。
「魔法使いになるわ。マリア。あなたのような」
周りが騒々しくなり始める。
雨とは別に砂利混じりの声が怒鳴り始めていた。
レディバグは立ち上がり、傘を拾い上げる。
優雅にさすと息子の逃げたドアから去っていった。
これで終わりである。
いやはや人間の感情は難しく上手に語れたであろうか。
あの後は警察によって片付けられた、事しか分からなかった。
レディバグはなんだったのだろうか、少女か化け物か或いは魔法使いか。
そんな事はわかる由もない。
今も私の中では家族が談話を楽しんでいるが、将来の夢はあるのだろうか。
あなたはどう?
雨降る今夜、レディバグが幸せを運ぶかもしれないよ。
When I grow up @yuu-hanabatake
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