蝶(百合用台本)

誰かのぽっぽちゃん

部屋の中

白鈴(パイリン):「はぁ…疲れた。」

蓮(リェン):「お疲れ様でした。お召し物を脱ぎましょう。お手伝いいたします。」

白鈴:乱れた着物を早く脱ぎたい。

白鈴:初めての相手は、思い出したくもない。

白鈴:ズキズキするほどの痛みが下半身に走る。

蓮:「白鈴(パイリン)様、大丈夫ですか?」

白鈴:蓮(リェン)が心配そうな顔をして私を見つめてきた。

白鈴:「もう無理、あんな男もう相手にしたくない。」

蓮:「白鈴様、いえ、小猫(シャンマオ)姉さ、」

白鈴:「こら。その名前で呼んじゃダメでしょ。婆に見つかったら怒られるよ。いいの?」

蓮:「でも、姉さんが僕は心配なの。」

白鈴:「はぁ…わかったよ。ほかの雛はいないから特別に呼んでもいいよ。でも、他の雛が来たら白鈴(パイリン)と呼んでね。わかった?」

蓮:「うん、わかった。」

白鈴:蓮(リェン)は私の幼馴染。私が齢(よわい)十三の頃この花街に売られた。その後に売られてきたのが蓮(リェン)だった。

白鈴:蓮(リェン)はここでの名前で、本当の名前は楼蘭(ロウラン)

白鈴:「楼蘭(ロウラン)、お前は早くここから出な。妓楼(ぎろう)に来るのはろくな男が居ない。だから逃げな。」

蓮:「やだよ。」

白鈴:「なんで?」

蓮:「だって、姉さんのそばに僕は居たいもん。だめかな?」

白鈴:「ダメってわけじゃないけど、でも、こんな辛い思い、楼蘭(ロウラン)にはさせたくない。」

蓮:「ねぇ、小猫(シャンマオ)姉さん、僕はさ、姉さんのことが、」

白鈴:「しっ!誰か来る。」

白鈴:ドタドタと誰かが走る足音がした。

白鈴:それも私達がいる部屋に来る音が。

白鈴:しばらく経つと、目の前を通っただけの足音だったと気づいた。

白鈴:「で、なんて?」

蓮:「ううん、なんでもない。」

白鈴:手を後ろにして、モジモジしていた。

白鈴:「そう、ならいいけど。」

蓮:「ねね、どんな男の人なの?今日の相手は。」

白鈴:「そうだね、腹を肥やしたおっさんだったね。いきなり襲われて痛かったよ。」

蓮:「そっか、お疲れ様。姉さん、僕が着いてるよ。だから僕が沢山話を聞くから、そんな悲しい顔をしないで。」

白鈴:楼蘭(ロウラン)はそう言った。

白鈴:「そんな顔してる?僕。」

蓮:「うん、してる。すごく悲しそうな顔をしてる。そんな悲しそうな顔、僕は見たくないよ。」

白鈴:「そっか、」

蓮:「ねえ。」

白鈴:「ん?」

蓮:「僕がもしここを出て、外の世界に戻れたら、必ず迎えに来るからね。」

白鈴:そんなことを言われ私はキョトンとしてしまった。

蓮:「…」

白鈴:「まぁ、お前が大人になる頃には私はもう年代物になってるだろうよ。」

蓮「そんなことないよ!姉さんはずっと綺麗だよ!」

白鈴:「そうか、ありがとう。そう言われて私は嬉しいよ。」

蓮:「ふふっ。」

白鈴:「ん?どうした?」

蓮:「ううん、なんでもない。」

白鈴:「そっか、」

白鈴:そんなやり取りをしていると、襖の外から婆が、急いで支度するように声をかけてきた。

白鈴:「分かりました。」

白鈴:「蓮(リェン)、急いで準備できるかい?」

蓮:「かしこまりました。急いでお召し物の準備をいたします。」

白鈴:今までのやり取りをかき消すように雛と蝶のやり取りをした。

白鈴:「別の男か、、、」

蓮:「暗い顔をしないでください。しばしの辛抱です。そんな泣きそうな顔をしないで。」

白鈴:「あぁ、ありがとう。」

白鈴:雛はいそいそとほかの雛を呼びに行き、もう一度身支度をした。

白鈴:今度は紫色の着物に銀の帯、先が紫の色をした黒い房(ふさ)の着いた簪(かんざし)、蝶の痣を赤く染め、紅(べに)を引き、髪を結い、身支度が完成した。


白鈴:「雛達、行ってくるよ。」

白鈴:そう言って私は部屋を後にした。



蓮「小猫(シャンマオ)、大好きだよ。」

蓮:小さな声で楼蘭(ロウラン)は蝶に言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

蝶(百合用台本) 誰かのぽっぽちゃん @Margarita-0221

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ