第6話 きせき?そして彼の意志?

「やべえ、くそ眠い。」


病院から戻ってきた俺は、謎の睡魔に襲われていた。

これはちょっと休みたいところだ。


「すまないが、少々寝たい。休める場所はないか?」


「それなら自分の部屋で寝なさい。」


俺の質問に気の強い女性が答える。


「俺の...部屋?」


「はぁ、そうだったわね。あんたが今日起きてきた部屋の事よ。」


ああ、あそこか。

ではここは遠慮せずにお言葉に甘えよう。


俺は最初に目覚めた部屋へと向かう。

眠気が限界だった俺は、すぐさまベッドに横になる。

そして徐々に意識が遠のいていった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



その頃...


「きーくん、どうしてしまったのかしら...。」


「病院の検査結果ではお兄ちゃんには異常はないって言ってたけど....。」


「あたしたちのことを忘れた....というより、見るものすべてを知らない感じだったわね。」


「まさかずっとこのまま...なんてことは...。嫌よ!きーくんがこのままだなんて!」


「母さん落ち着いて。もしかしたら疲れているだけかもしれないし。」


「でもお姉ちゃん、お兄ちゃんまるで別人だったよ?一人称も【俺】だったし...。もし、お母さんの言う通りこのままだったら....。」


「本当に別人...なんて、まさかね。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



俺は不思議な空間にいた。

ここはどこだ?夢?

俺は手をグーパーしてみるが、どうやら夢ではなさそうだ。

そんなことをしていると、突然声が聞こえてくる。


「アレス=エングラム、ですね?」


「ん?あんたは一体...?」


「私は...そうですね、大いなる存在とでも言っておきましょうか。」


「大いなる存在...まさか....いやまさかな。それで俺に何の用だ?」


「まずは謝罪しておきます。あなたが今いるこの世界は、あなたが知っている世界ではありません。」


「俺の知っている世界じゃない?どういうことだ?」


「今あなたが居るのは地球という星。そして日本という国です。」


「にほん?聞いたことのない国だが...なぜ俺をそんなところに?」


「あなたには阿多梨輝汐としてこの世界で過ごして欲しいのです。」


きせき...なんか聞いたことあるフレーズだが...


「え?なんで?」


「詳しく話すと長くなるのですが、今のあなたの身体はあなたのものであって、あなたのものではありません。というのも、並行世界、パラレルワールドと言えばわかるでしょうか。そこに生を受けた阿多梨輝汐という人物。その者の身体です。」


「う、嘘だろ...。でも顔は俺そのものだぞ?ちょっと若返ってるし、髪は正直長くて鬱陶しいが...。」


「はい、ですからあなたの身体はあなたのものであってあなたのものではないと言ったのです。先ほども言いましたが、パラレルワールド、つまりは別の世界線のあなた、ということになります。」


別の世界線の俺?

え?マジ?そんなことあるの?

確かに今日は見る物聞く物知らないものばかりだったが....。

マジかぁ、えっ、てかじゃあ俺、これからどうなるの?


「落ち着いてください。まずは日本についてですが、人口約1億数千万人の国です。」


いちおくすうせんまん?え?多くね?


「そしてここが大事なのですが、こちらの世界には魔力がありません。」


魔力がない?しかし俺の身体には魔力が確かに宿っている。

なんなら今日も魔法使ったし。


「あなたが魔力を使えるのは、今回行われたものが身体のスペックを受け継いだ転移だからです。」


「スペックを受け継いだ転移?」


「ええ、ですから身体能力、魔力、知力などそのままの状態なのです。」


ほんええ、そんなことができるんか。

ん?待てよ?


「2つ質問がある。」


「何でしょうか?」


「なぜ身体のスペックを受け継ぐ必要があったんだ?」


「それは....まだ言えません。しかし、阿多梨輝汐、彼の意志によるものであるとだけ言っておきます。」


「もう一つ、その阿多梨輝汐本人はどうなったんだ?」


「彼の精神はあなたの今の身体の奥底に眠っています。それと、あなたのもとの身体はこちらで保管してますので大丈夫です。尚、阿多梨輝汐という人物についてですが、家族は母親、姉、妹の3人。そして現在16歳であり、学生ということになっています。」


よくわからんが、まあなんとかなるだろ。

日本とかいう国で無難に生活をしつつ、元の世界に帰る方法を探す、ってところか。


「わかった。とりあえず頑張ってみよう。」


「では私はこれで。....ああ、そうでした、言うのを忘れていましたが、あなたがこちらの世界でアレス=エングラムであるとばれた場合、あなたは元の世界に戻れなくなります。そして阿多梨輝汐の精神も消滅します。それでは、健闘を祈ります。」


え?えええええええええええ!?

何で一番大事な情報を最後についでみたいな感じで言った!?

ばれたら戻れなくなるの俺!?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「はっ!?」


何だ夢か....と言いたいところだが....参ったな....。

どうしたものか...。

そう考えていると、


コンコン


早速ピンチがやってきた。

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裏社会最強の俺、知らない世界に飛ばされて困惑中。え?日本?どこだよ... @poyupin

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