第6話 英雄王の始まり
「うん……僕の村でよかったら案内する、約束するよ」
たとえ国王でも、オーロラはまだ幼い少女だ。タックは子供のころ、好奇心に任せた遊びで両親に何度もしかられたものだ。彼女はきっとカゴの中の鳥なのだ……そう考えたとき、ひらめきがやってきた。
「今から行こうか!」
きょとんとする彼女を急かし、部屋の外へ連れ出す。
「た、タックよ、本気で言っておるのか!?」
「おい何をしている!!」
階段を駆け下りて玄関ホールへ出ようとしたところ、兵士に呼び止められてしまった。顔をよくみると昨日の門番だった。
タックは嘘が苦手なので正直に話すことにした。
「彼女に僕の故郷を見せたいんです。たぶん三日くらいは戻らないかと思います。大丈夫、ちゃんと帰ってくるから、どうかここは行かせてください!」
すると兵士が急に笑いだした!
「ハハハハハハハ!! 言っただろう、妙なことをしたら……と!」
「そ、そこをなんとか!」
門番はやれやれ、とつぶやき、背中を向けた。
「クロムス陛下はたくましく強い男で、王都の少年少女たちにとって英雄だ。貴族の連中にとってもな。それはそうと、ときどきいるんだ。いたずらで城に入り込もうとする子供がな。見つけたときはいつも外へ連れ出していた。今回はお前のおかげで手間が省けたな」
「門番さん……」
「そなた……」
「つまりどういうことですか?」
門番はずっこけた。
「……もういい、行け。7日以内に帰ってこなければ捜索隊が出るだろう。だからそれまでに戻ってくるんだ」
「はいっ!!」
***
これが異界の神を討ち滅ぼし、クロムスとアージェンティスの二国を統一した英雄王タックの旅立ちである。
終わり
新訳・光戦記 英雄王タックの神ごろし 佐倉じゅうがつ @JugatsuSakura
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