最終話『生意気で可愛い彼女』

「せんぱーい!一緒に帰りましょー!」


 夕方の教室に元気の良い声が響く。

 ドアの前には笑顔の彩芽が立っていた。


「うるせぇぞ彩芽。叫ばなくても一緒に帰るつもりだっての」

「でも先輩!ぜんっぜん私の教室に来てくれないじゃないッスか!」

「それは…ほらアレだよ、上級生が下級生の教室行ったらビビっちゃうだろ?」

「先輩がッスか?」

「そうそう…ってんな訳ねぇだろうが!!」

「ぎゃー!アイアンクローはやめてッスー!!」


 ギャーギャーと喚く彩芽と一緒に校舎を出た。

 3日前に行った遊園地デートから、俺と彩芽は正式に付き合い始めた。前にも増して積極的に絡んでくるようになった彩芽に対し、俺は以前のような鬱陶しさは感じていない。


「もー…それが彼女にする仕打ちッスか!ぼーりょく反対ッス!」

「むしろ彼女以外にやった方が問題だろ」

「えっ…先輩ってDV気質だったんスか…それともSMプレi──」

「おぉと手が滑ったー!」

「痛っ!」


 叩いた彩芽の頭から小気味いい音が響く。あまりに派手な音が鳴ったもんだから、俺も少しびっくりしてしまった。


「すげぇ音したな…大丈夫か?」

「うぅ…先輩に傷物にされたッス…もうお嫁に行けない…しくしく…」

「よしっ大丈夫そうだな」

「白状ッスねぇ!」


 2人並んで道路を歩く。いつも通りな流れで油断していた俺の手に彩芽の手が触れた。


「彩芽?」

「あのー…せっかく彼女になったんだし…手ぐらい繋ぎたいなーって…」

「あぁ、そんなことか」


 控えめに触れてきた彩芽の手をガッツリと握り返す。握った瞬間に彩芽の口から「ヒャッゥ!」と悲鳴が上がったのが面白かった。


「な、なんでそんな平気そうなんスか!」

「心配すんなよ。俺も少し恥ずい」

「少しじゃないッスか!私なんて…もう…心臓が飛び出そうなのに…!」

「そりゃ良かった」

「なんで!?」

「だって…嫌じゃないんだろ?なら良いさ」

「っ!…ホントずるいッス…!」


 彩芽が嫌じゃないのなら、俺が嫌がる理由は無い。

 恥ずかしさも感じるが、それ以上に彩芽と手を繋げることの嬉しさが勝っている。


「そうだ、今日俺ん家寄ってくか?」

「いきなり家ッスか!?」

「えぇ…前に遊びに来た事もあっただろ?」

「そ、それは…彼女になる前ですし…」

「別に何も変わんねぇよ!」


 人をなんだと思ってんだよ…彼女になったからっていきなり襲ったりする訳ないだろうが!

 ただ彩芽とゆっくり話がしたいだけだ。他愛なくてもいい、笑い合える時間をゆっくりと共有したいだけ。


「じゃあ…オジャマするッス」

「おう!」


 家へと歩き出した時、彩芽がふと立ち止まった。俺も釣られて立ち止まると、彩芽がくるりとこちらの方に向いてきた。


「先輩!」

「どうした急に…彩芽?」

「これからずっと…ずぅーっと一緒ッスからね!」

「なんだよ急に…そんなの当たり前だろ?」

「えへへ♪その台詞が聞きたかったッス♡」


 満面の笑顔を浮かべた彩芽が、今度は腕を絡めてくる。引っ込み思案なのか大胆なのかよく分からんが、彩芽の嬉しそうな笑顔を見るとそんなのどうでも良く感じた。

 俺の知らない彩芽の1面なんて、そんなの無限にあるだろう。それならこれから無限に知っていけばいい。2人並んで歩く帰り道、絡めた腕が離れることは1度も無かった…

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【1000pv突破感謝!】生意気な後輩をデレデレになるまで甘やかしてみた 転校生 @Tenkousei-28

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