第51話 閑話 パレット

「ブラックに続きレッドもやられたか」

「くくく、所詮奴らは最弱のノーマルカラー」

「ここからはが相手をしてくれる」

「マーカス・ラメピンク!」

「なんの! マーカス・ドドメ!」

「我らホワイト200人衆の出番のようだな」

「貴殿らには荷が重かろう。あ奴らは拙者――魔亜粕まぁかす浅黄あさぎの刀の錆にしてしんぜよう」

「ふん、貴様らは引っ込んでいろ。奴らを葬るのはこのマーカス・#EF4123だ」



「――っていう可能性があると思うっす。こっちも特訓したり仲間を増やす必要があるっす」


 ぽんこつ天使の言葉を受け、車内に溜息が重なった。


「ラメピンクって弱そうじゃね?」

「ドドメ色もね。というか200人ってもはやエキストラじゃない。スタッフロールにぎりぎり名前が載るかどうかってレベルよ」


 さらっと芸能人っぽい発言を挟んだ朱里に続き、カレンも笑う。


「エキストラも困りますけれど、急に和風にしてキャラ付けされても困りますわね」

「最後のは何の暗号だ?」

「何言ってるっすか。カラーコードっすよカラーコード。個人ホームページを作るのにカラーコード一覧とにらめっこした思い出がよみがえるっすね」

「個人、ホームページ……?」


 ミカエル以外の約全員が眉をひそめる。


「SNSのプロフのことかしら」

「いや……雰囲気的にはブログとかじゃないか?」

「カナタ先輩もおねえさまも知らなくても無理はありませんわね」

「カレンは知ってるの?」

「はい。引きこもり時代はネットの海を泳ぎまくってましたから!」


 カレンによれば、ネット黎明れいめい期――まだブログすらなかった時代は自分でホームページを作るのが流行った時期があったらしい。

 小説やイラストを公開したり、自分の好きなコンテンツを発表する場として活躍したとのこと。


「まぁだいたい25年前には衰退してますわね」

「四半世紀、か」

「帰ったらママに聞いてみようかしら」

「……親世代、か」

「うるさいっすよ!? 親世代なわけないじゃないっすか!」

「そうですわよ。ミカエルと言えば神話にも名を残す天使……つまり年齢は四桁ですわ」

「カレンちゃん!? 味方のフリして背中から刺しに来るのやめるっす!」

「でもまぁ、確かにマーカスってもっと色々いそうな気がするよな……”魂砕き”は終末魔法と同系統っぽいしシャレになんないから、何か対策が必要だろうな」

「理不尽アスレチックに閉じ込めるとか?」

「カナタ先輩に撃退してもらうのが一番だと思いますの」

「いや、だから複数のマーカスが来た時の対処法だよ」


 一体であれば終末魔法を操れるカナタが対処するのが一番現実的でリスクが少ない方法だろう。

 だが、多数のマーカスが攻めてきたとなれば話は変わる。カナタは分裂も分身もできないし、朱里もカレンも”魂砕き”に対抗する手段を持っていないのだ。

 難しい顔で考え込み始めたカナタに、カレンが手を挙げる。


「例えば黄緑とマゼンダがいたとするじゃないですか」

「絶妙に強くなさそうな色合い」

「二人をぶつけたら混ざって微妙な色合いになって弱体化しませんか?」

「絵具みたいな理論だな」

「ドドメとか弱そうっすもんね」

「でも合体とか融合そういうのって、基本的には強くなるものじゃないの?」

「強くって……最強にして最古の一体、”マーカス・ザ・カオス”とかっすか?」

「急に厨二チックだな」

「じゃあ八人が合体してキング・マーカスとかどうっすか?」

「どうって言われてもなぁ……回復魔法使えそうだとは思うけど」

「残念っすね。育成ゲーの方準拠なんでギガスラッシュとかジゴスパークも使えるようになるっす」

「やかましい」


 一応は天使の癖に人間のサブカルに異常に詳しいが、今更なのでカナタは完全にスルーした。

 その上で、脳内でロスミスの設定をほじくり返した。


「”魂砕き”を回避する方法、か……」


 その呟きは、車内の喧騒に溶けて消えた。



※ラメピンク

小学生くらいの頃クラスの女子の間でラメペンとか書いてる途中でどんどん色が変わるペンとか流行ったよね。中学に入った辺りでほぼ絶滅した気がするけど、女子の筆箱のサイズがすごかった思い出。ちなみに作者はシャーペン二本と三色ボールペン一つと消しゴム一つでした。ミニマル!


※白って200色あんねん

 マーカス・ホワイトと名乗る奴がいたら周囲をきちんと確認しよう。一人いたら二〇〇人いる可能性があるぞ!(ないです)

 ちなみに上記の発言をした人によると黒は300色あるらしい。


※#EF4123

カラーコードと呼ばれる六ケタの数字でブロンズレッドを表す数字。16進数なので0~9だけでなくA~Fまで使われる。シャープの後、2ケタを使ってそれぞれ赤・緑・青の光の強さで、これを混ぜたものが該当の色になる。


※個人ホームページ

レンタルサーバーを借りてFFFTPとか使いながらぽちぽちやってました。メモ帳で開いてHTMLというかタグを直打ちしてた思い出。音楽つけたりとか背景を画像にしたりもできる。ニッチな趣味のページは最初に注意書きとかがあって、ちゃんと読んでその中に隠されたリンクをクリックしないと入れない仕組みだったりした。

カウンター・掲示板・日記等々も無料レンタルのを使って、イラスト系の人はキリ番でリクエスト受け付けてたりもした。忍者ツールズ……うっ、あたまが……!


※キングスライム

ドラゴンクエストシリーズに出てくるモンスター。スライムが仲間を呼び、8匹になると合体する。育成ゲーの方はスピンオフ作品でドラゴンクエストモンスターズシリーズ。初代に当たるテリーのワンダーランドは死ぬほどやり込んだ記憶がある。最高に面白かったし未だにやりたくなる。ただし知恵の扉のあみだは絶対に許さない。

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世界を救うためにアイドル系美少女の心のダンジョンに潜って攻略してるんだが、現実世界でも勝手に攻略されようとしてきてヤンデレ化してく 吉武 止少 @yoshitake0777

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