第27話 後宮騎士団と婚姻の申込
「ジャクリーン・岸和田!貴殿を後宮騎士団団長に任命する!」
皇帝の御前にて宰相より勅旨を受けるジュリア。
「謹んで拝命します。」
ジュリアは王侯の礼を持って勅旨を拝命します。
彼女の後方で皇帝へ拝謁しているのは、武装メイドと女性騎士達、併せて20名。
ここに、皇国初の後宮騎士団が誕生するのです。
ジュリアがメイド達も含めた有志と始めた『護身塾』。
塾が開塾されてから半年、塾生達はドンドン頭角を表し、近衛騎士の精鋭でさえ舌を巻くような地力をつけるのでした。
そして気がつけば、後宮…王妃や王女の護衛を専属で行う女性部隊の創設話が持ち上がって来たのです。
下手にジュリアが近衛騎士団でも屈指の実力者だったということもあり、護衛の要望は募るばかりとなるのでした…主に
さて、後宮騎士団の衣装は、特徴的です。
騎士団長は、唐草模様で飾られた鉄製の胸当てと篭手を真っ赤なドレスの上から纏い、スカートの上にも唐草模様で飾られた鉄製のスカートアーマーを履いています。
騎士も同じような装備になりますが、彼らのドレスは、メイド達と同じ紺色の物となっている。
騎士は一律に、エストックとソードブレイカーを支給され、利き手の反対側に二本帯剣している。
メイド達は、メイド服の上からレザーアーマーの胸当てと篭手、スカートの上にもレザー製のスカートアーマーを着け、純白のカチューシャとエプロンが紺色のメイド服に映えています。
しかし、後宮騎士団が守らないといけないほどには皇国の治安は悪くもなく、貴族も領民も穏やかな生活を送っている状況でした。
それが表面上だったことは、後に判明することなのだが、この国は実に穏やかで平和な時間を過ごしていました。
「ジャクリーン嬢、お時間よろしいかな?」
後宮入口で公務に就いていたジュリアに話しかける宰相。
「あと半刻ほどで交代となります。
交代後に貴殿の執務室にお伺いすれば宜しいでしょうか?」
「ああ、それで構わない。
では、後ほどお会いしよう。」
そう告げ終わると宰相は王宮へ戻って行った。
ジュリアとペアを組んでいた後宮騎士が不安そうな視線を向けてきますが、軽いウィンクで応えるジュリア。
特に問題が発生することもなく、公務を完了したジュリアは宰相の執務室へ向かう。
「ジャクリーンです。」
ジュリアの声に応えるように、内開きの扉が開かれると、奥の執務席に宰相が座って待っています。
「よく来てくれたね。
ささ、ソファーに座ってくれ。」
「失礼します。」
宰相に促され、彼の向かいにあるソファーへ座るジュリア。
「それで、ご要件は?」
ジュリアの質問を受け、ゆっくりと執務席を立ち、彼女の向かいのソファーへ座る宰相。
「うむ、実は相談があってだな…。」
少し考え込む宰相、ジュリアも黙って彼が口を開くのを待っている。
「ジャクリーン殿には恋仲のものや意中の殿方などは居られるかな?」
宰相が戸惑いながら問いかける。
「居りません。」
淡々と応えるジュリア。
「ですよねぇ~。」
眉間を押さえ当惑気味の宰相と、言葉の意味を理解できないジュリア。
「実は、貴殿宛てに婚姻を申し込む殿方が居ってだな…。」
宰相はゆっくりと話し始める。
「そうですか…。」
ジュリアも深く溜息をついた。
「ついては、一度故郷へ戻り、ご両親と相談されてはどうかと思うのだが…。」
「分かりました。」
ソファーを立ち上がるジュリア。
「出立の時期などについては…。」
宰相が日程の調整に入ろうとすると。
「いえ、それには及びません。
姉を…パトラを呼んでもらえますか?
今の時期は、王都に滞在しているハズです。」
ジュリアは戸口の前でそう応える。
「分かった、連絡が取れ次第、使いを送るとしよう。」
宰相もソファーから立ち上がる。
「よろしくお願いします。」
戸口から宰相の方に振り返り、カーテシーをするジュリア。
宰相は目を細め、ジュリアは扉を開き外に出るのでした。
Königin-Kandidatin たんぜべ なた。 @nabedon2022
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