転生したら親だった件

細猫

第1話 日常

「ねみい」

 今日もいつものように俺はベッドに寝転がっていた。それも平日に、だ。

 だが、今日の俺は学校を休んだわけではない。ちゃんと制服まで着ているし、登校する準備は万端だ。


 しかし、もうとっくに八時になっているもののまだ学校には行っていない。そしてこれから行くつもりもない。完全にサボりである。


 俺の名前は高橋宝。現在高校2年生の立派な引きこもりである。今日も今日とて俺はゲーム三昧だった。


 そんな俺を見てか親は時々「そろそろ登校しないとやばいんじゃないのか」とか思うわけだが、俺はもう学校に行くつもりはない。


──だって、学校なんて行ったって何になるんだ?俺はテストの成績だってどうでもいいし、将来だって別にどうも思ってない。俺は学校が嫌いだ。あんなところにいたら体がもたない。学校さえ行かなければ、あとは幸せだ。


なので俺は、今日もぬくぬく家で引き…………ゲフンゲフン……惰眠を貪ることにしよう。

そう思ってゲームを続けていると、ふいにドアの方からコンコンという音がした。

「ん?」


俺は何事かと思い、ベッドから立ち上がりドアの方へと歩いていく。


「何?」

そう言いつつドアを開けるとそこには父親がたっていた。

「お前、何でまた学校に行ってないんだ」


「え、いや……そりゃ行きたくないからでしょ」


「またそんなこと言って……お前もう高校2年生だろ?」


「……うん。だから何?俺だって行きたくて行ってるわけじゃないよ」


俺は父親が苦手だ。無口なタイプだし、口やかましいし、何より俺が不登校気味になってからいつもガミガミ言ってくる。俺はこの父親のせいで学校に行けなくなってしまったのに……何でいつも怒るんだよ死ねこのカス。


「もう高校生だろ?将来のこととか考えないのか?この穀粒しが」


「はいはい分かりました。ちゃんと卒業するまでには登校します」


「そんなこと言って、また家で遊ぶつもりだろう、大体お前は…」


──あぁもう……うるせえな……。


「本当にうぜえなあこのハゲ親父が!うるせぇよさっさと俺の前から消えろ!」

「な、何てこと言うんだ!お父さんに向かってそんなこと言うなんて……お父さんはお前のために……!」

俺がキレて叫ぶと父親もそれにつられたのか怒鳴り始めた。それが余計俺をイラつかせた。


「何だよそれ!恩着せがましい!

子供を育てるのは親の役目だろ!」


そんな言葉が口をついて出た。


やっぱりだ。クソ親父の顔がタコみたいに赤く染まっている。やらかしたーと思う。


「この、親不孝者!こんなクズ、出ていけ!」

 親父は俺の頬に強烈なビンタをかまし、ドアを強く閉めて去って行った。


「こんなクズ、出ていけ、か」

 そりゃそうだろうな、と俺は思った。15歳で望んでもないのに子供ができて、人生メチャメチャにされたんだ。そりゃあ俺みたいな奴はいなくなった方がいいに決まってる。


──でもさ、本当に俺が悪いの?


 俺は引きニートだ。学校に行ってないからずっと家にいるし、勉強も何もしていない。だけどさあ、俺だって望んでそうなったわけじゃないよ。


 それでも親は俺を怒って、引きニートになってしまった俺に怒って、出ていけと言う。


 俺は正しいよな?

 俺ってそんなにダメな奴?

 学校をサボってずっと家にいる奴がそんなに悪いの?


──ああそうか、分かったよ。お前らはみんな俺を悪者扱いしたいんだな?お前らが俺の敵なんだな?それならもういいさ。お前らの言う通り出て行ってやるよ。こんな家、こっちから出て行ってやるさ!


俺は怒りに身を任せながら自分の財布だけを持って部屋を出た。

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