第二十一話


 お詫びとお知らせ


 実は数日前に発熱してしまい、40度付近をずっとウロウロしてる状態です。昨日更新分と今日の更新分はまとめて一話で出すつもりだったんですが、体力が持たずやむなく途中で投稿していました。

 今日の更新分はやや短めになっておりますが、そういった事情がございます。

 楽しみにしてくださっている読者の皆様、申し訳ありませんでした。

 それと発熱がなかなか治らないので、明日明後日の12時更新は難しいかもしれません。そちらもご了承ください。


────────────────────────────────────



「それで、本題である食糧問題についてですが……」


 撃沈していたヴェリナも元通りになったところで、セカンドが仕切り直した。


 こういった場も任せられるようになったのは非常に大きい。


 成長と学びの成果を実感できる。

 先程までの話は本題とは全く無関係で、だだ未熟なヴェリナが場をかき乱しただけだと厳しすぎる捉え方も出来る。まあ、流石にそんなことは思わないが、色んな側面から物事を捉えられるという例だ。


「私はジルベール商会の力を利用するのが良いかと」

「ほほう、ウチの力ですか」

「はい。山脈の向こう側から仕入れます」

「……え? 山脈の向こう側……?」


 ヴェリナが呆然と呟く。


「あれ? 教えてないんですか?」

「今回機会があれば教えるつもりだった」

「ははあ、なるほど」


 そしてちょうどいい機会は出来た。


「ジルベール商会に元々俺が所属していて、他国で活動していたという事は教えたな」

「はい」

「商会に所属していた数年間で、俺がずっと主導してきたプロジェクトが存在した。最初からこの国のこの領地を手に入れると目標を定めていたが故に推し進め、莫大な費用を掛けて達成したもの──それが、あの山脈を越えるプロジェクトだ」


 このプロジェクトを成功させたことで、ジルベール商会は一気に勢力拡大を成し遂げた。


 通常立ち入ることの難しい山を通り物資の輸送が可能となったからだ。


 何もこの山脈だけではない。


 他の地方にも当てはまる。


「山を……」

「ああ。海路で優位性を取るのはほぼ不可能なのが故に試したことだったが、うまくハマった。結果があの資金力だ」

「まあつまり何が言いたいのかと申しますと、あの山の向こうにはジルベール商会本部があります。そこから大部分の資材・食料を運ばせれば今回の食糧問題に関しては解決できるでしょうね」


 こんな僻地にこれまで密偵を送るような奴もいなかったが故に出来ることだ。


 謎に包まれた資金力とどこから湧いてきたのかもわからない資材、この国の商人からすれば恐ろしいことこの上ないだろうな。


「このネタでしばらく既存商会とはうまく付き合っていけます。それに関してはお任せを」

「取引する物品に嗜好品が存在せんから、各侯爵に睨まれそうだがな」

「いやあ、大丈夫ですよ。それこそヨハン様がハイゼンベルグ侯爵に気に入られてますから」

「……そこまで見越していたんですね」

「最上のパターンと言っても差し支えないほど薄い線だったが、現状はそこを辿れている」


 大部分をジルベール商会に頼み、あと足りない分をこの国の商会から買い付ける。


 それが現状最も手早く安全なルートだ。


 この出費が利益になるまで後どれくらい掛かるのだろう。


 少なくともただの平民に一攫千金の道なんて存在しないし、それは商人であっても同じことだ。


「では食料に関してはそれで。詳しい話はまた後で詰めましょう」


 セカンドが結論を出した。


 俺も異論はない。


 俺の出した答えとあまり変わらない結論が出せるようになったのは喜ばしいことだ。ヴァレリーがいる以上外れすぎる事はなかっただろうが、セカンドの成長が感じられるのと同時にヴェリナの認識を変えるのにも役立った。


 やって正解だったな。


「家やら何やらは彼らに作らせましょう。自分達で作った居場所はなかなか捨て難いものですから」

「はい。土地はたくさんありますから、農民としての働き口も確保出来ます。開墾等も任せますか?」

「無論だ。目立った特産品やら何やらはまた今後考えていかなければならない問題だが、今は一年後の成果を気にした方がいい」


 まずは無難に麦やら何やらの収穫を出来るようにして自給自足を可能にし、地盤を固めてからだ。


 この後も話し合いは続いた。


 ヴェリナはやや意気消沈していたが、これから学ぶことが沢山あるだけだと奮い立っていた。


 本当にいい買い物をしたものだ。

 まだまだ油断出来ない状況は続くが、目指している地点までの道筋がハッキリ見えている。あとは、そうだな。移民は勝手に流れてくるかもしれないが、人材に関してはそれだけでは足りん。


 サードが戻り次第探らせていたものを確認し、勧誘の目処はつけておかねばな。


「……ご主人様?」

「なんだ、ファースト」

「楽しそうだったので」


 …………表情は変えてないはずだが。


「雰囲気です」

「……ふん、そうか」


 そんなことを言ってきたファーストの雰囲気もいつもより柔らかい物な気がした。


 まあ、どうでもいいことだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪徳領主の野望 恒例行事 @KOUREIGYOUZI

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ