後日談その3(第83話)
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夏休みが終わり暦の上では秋だと言うのにまだまだ暑いシルバーウィークが終わってすぐの土曜日の今日、
と言うのも、今日は文化祭で一般客も気軽に入ることができるので、ぜひ来て欲しいと陽希さんから誘いを受けたからだ。
僕らとしても進学希望ということもあるので、渡りに舟とばかりにやってきた。
校内の雰囲気は賑わっていてこういった環境に身を置くのも悪くないという印象を受けた。
まずは陽希さんに挨拶をということで陽希さんのクラスへ向かうことにしたのだけど、賑わいに相応した混雑ができていた。
「あのさ、優斗くん。迷うといけないから手を繋ごう?」
朱音さんがそう言うと返事も聞かずに僕の右手を自身の左手で握ってきた。
「朱音ちゃん!
ゆうくんから離れて!」
梨衣子は放そうと朱音さんの腕を引っ張った。
「あっ」
思ったよりも強い力で引っ張られたからか朱音さんはバランスを崩してしまい、その勢いのまますぐ側を歩いていた女の人にぶつかってしまった。
「「すみません!」」
梨衣子と朱音さんは異口同音でぶつかってしまった女の人に頭を下げて謝った。
「痛くなかったし、気にしないでくれ。
この雰囲気ではしゃぎたくなる気持ちもわかるしな。
わかっていると思うが、こんな人が多いところでふざけてると危ないから気を付けてくれ」
「それはもちろん。
でも、本当に大丈夫でしたか?」
「ああ、大丈夫だ。せっかくの文化祭だ。お互い楽しもう。
では、これで失礼する。
じゃあ、みんな行こうか・・・
朱音さんがぶつかった女の人へ大丈夫か確認をしたら気遣いの言葉を僕らへ残して、連れの人たちと去っていった。
「朱音ちゃんもごめんね」
「ううん、あたしがふざけちゃったのが悪かったし・・・」
「それは朱音ちゃんが悪かった・・・けど、せっかくの文化祭だしこれ以上はやめよう」
「そうだね。りーちゃんの言う通りだね。気を取り直して陽希のクラスへ行こう」
梨衣子と朱音さんがお互いに謝りあったところで陽希さんのクラスへ移動を開始した。
「それにしても、さっきの女の人は別の高校の人だったのかな?」
「たぶんそうだよ。連れていた女の子はわたし達と同じ中学生って感じだったけど、しっかりしたお姉さんって感じだったもんね・・・って、なんで芽衣子はゆうくんの隣りにいるのかな?」
梨衣子と朱音さんが並んで先導してくれていたので僕と芽衣子ちゃんで並んでついて行っただけなのに、梨衣子はそのことに不満な感情を隠さずに芽衣子ちゃんを責める口ぶりで問いただした。
「なに言ってるのお姉ちゃん。朱音さんと並んで先に行ってるから、それについて行ってるだけじゃない。
こんなに混んでいるのに横並びで行くわけにいかないでしょ?」
「それはそうだけど・・・ゆうくんと自然に並んでてズルい・・・」
「ホント・・・お姉ちゃんったら」
さっきの朱音さんとの件と言いヤキモチを焼きすぎな気がするけど、その気持ちが嬉しくもあるので咎められない・・・
「じゃあ梨衣子が隣においでよ。芽衣子ちゃん、いいかな?」
「いいですよ。そもそも他の人の迷惑にならないように邪魔にならないようにしていただけなんですから」
「ごめんね、芽衣子ちゃん・・・ほら、梨衣子」
そう声を掛けると梨衣子は嬉しそうに微笑み、芽衣子ちゃんと入れ替わるように僕のとなりへ寄ってきた。
今度は芽衣子ちゃんと朱音さんが先導して移動を再開し、梨衣子が僕の手を握ってきたので握り返してそのまま陽希さんのクラスへ移動した。
陽希さんのクラスへ着くと、笑顔で僕らを出迎えてくれたけど、僕と梨衣子が手を繋いでいるところを見て呆れた表情を見せ、芽衣子ちゃんと朱音さんとアイコンタクトを取り合った。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
◆後書き
久しぶりになりますが、後日談の小話3つ目を書かせていただきました。
先日カクヨムコン9の中間発表があり、本作が最終選考へ駒を進めることができました。
応援してくださった読者の皆様のおかげだと感謝しており、そんな感謝の気持もあって今回後日談を書かせていただきました。
また、本作とは関係ありませんが、3月15日で私がWeb小説を初めて投稿してから1年が経過しました。
最初に投稿した時はここまで色々書けると思っておりませんでしたが、それも応援してくださる方々のおかげであると思います。
気持ちとしてはもちろん応援していただきたいですが、ただ応援をお願いするのではなく、今後も応援していただけるように精進していきますので、よろしかったら今後も見守っていただければと思います。
幼馴染みクライシス したらき @kkak
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