四章 壁を破る方法

ぼんやりとしていた。

何をする気もしなくて、一日中ベッドの上にいた。


お気に入りの曲を聞いたって、大好きな匂いのアロマを炊いたって、体が楽になることはない。

まるで昔みたいに、心臓がぎゅっと締め付けられるような、体が思うように動かなくなるような。

そんな、不思議な感覚。

「あんたこんなに痩せ細って!一昨日と大違いじゃない!」

家を訪ねてきた会社の先輩に言われた。

鏡なんて見ないから気が付かなかったのだ。

げっそりと痩せ細った体。色濃く隈のつく、血色の悪い肌。

例えるなら、ハロウィンにいるフランケンシュタイン。


大慌てで先輩が買ってきた栄養ドリンクやゼリー等を食べつつ、あなたを思う。

片時も、あなたが頭を離れない。


だらだら、ただぼーっとしながら、椅子に座ってた時。

突然、思い出した。

壁を破る方法が、一つだけあることを。


『境界線、ずっと東に進むと、小さな抜け穴があった』


この間、図書館で借りた本に書いてあった。

小さな抜け穴から、向こう側に出ることができると。


それかもしれない。

決めた。明日決行だ。

ありったけの食料、水を入れた鞄に、服や大切なものを詰める。


絶対に成功させてやる。

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ガラスを灯る 白雪 @nakamurayuka

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