角川歌壇、「短歌」2023年12月号より
滝口アルファ
短歌3首
1首目。
例えば画面の片隅にあるQRコードはとてもさびしい花だ
歌人・山中律雄選、佳作。
〔解説〕
テレビを観ていると、
テレビ画面の片隅に現れる
あの小さな白黒のまだら模様。
QRコードは、
テレビ番組が終わると共に消えてしまいます。
その儚い感じが、
現代に咲くさびしい花のように思えたのでした。
2首目。
星月夜 承認欲求大魔王われはほほえむPV増えて
歌人・佐波洋子選、佳作。
〔解説〕
「PV」は、言うまでもなく、ページビューのことです。
PVが増えて喜んでいる自分の姿を、
自虐的に表現してみました。
しかし、考えてみれば、
SNSに作品を投稿する人はみんな、
多かれ少なかれ「承認欲求大魔王」なのかもしれませんね。
そして、初句に「星月夜」とありますから、
星たちの光が優しく降り注ぎながら、
「承認欲求大魔王」の荒んだ心を癒している夜なのでしょう。
3首目。
秋の風 鏖殺(おうさつ)されたかのように青い小鳥が消えてしまった
歌人・綾部光芳選、佳作。
〔解説〕
「鏖殺」は、皆殺しという意味です。
最近は、ツイッターのロゴのあの「青い小鳥」を
めっきり見かけなくなりました。
まるで何者かに鏖殺(皆殺し)されたかのようです。
未だに、Xという名称には違和感がありますが、
それも時間とともに、少しずつ慣れていってしまうのでしょう。
なんか寂しいなあ…と、
私は、秋風の吹き抜ける中で思ったのでした。
角川歌壇、「短歌」2023年12月号より 滝口アルファ @971475
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