第29話 最強対最強
反乱が起きてから6時間が経過した。
普通の人間ならもうとっくのとうに動けなくなっているだろうが、ここにいるのは冒険者だ。
ダンジョンは基本6時間で出れるようなところでは無いので、みんな体力的にはまだ余裕そうだ。
怪我をする人もいるが、それは優秀な『治癒魔法』を扱う人たちがいるようで、ぱっと見だと大丈夫に見える。
だが、6時間も経つと強い魔物も増えてくる。だから、今では10人1グループになって一体ずつ確実に魔物を倒している。
魔物は強くなればなるほど群れなくなる。
理由は知らないが、おそらく自分一人で全てが事足りるからだろう。
今が何階層かは知らないが、最初に比べれば魔物の数も減ってきている。
まぁ、その分魔物が強いから全然状況が良くなったわけでは無いけど………。
「ふぁ、
「
「ここから早く離れろぉぉ!!!Aランク、いや、Sランク冒険者の到着を待つんだぁぁ!!」
暴走している今なら、A級冒険者ですら束にならないと勝つのは難しいだろう。
流石にあれは俺が行ったほうがいいな。
「天神流 一の太刀
俺は一瞬で五頭竜に近づくと、その頭のうち一つを刀で切り落とす。
『グオォォッ!?』
その瞬間、五頭竜はいきなり自分の頭が切られたことに驚きを表した。
だが、次の瞬間には俺がやったと気づいたようで、こちらに向かって突進してきた。
『グオォォォォォ!!!』
巨大な雄叫びと共に地面を揺らしながらこちらに向かってくる五頭竜を、俺は避けもせずに正面から迎え撃つ。
「天神流 二の太刀
五頭竜と同じ高さまで跳んだ俺は、そのまま四つ残っている頭を切り落とした。
「ご、五頭竜が………!」
「こ、こんなにもあっさりと……!」
何故か五頭竜から逃げないで俺達の戦いを見ていた冒険者たちは、そんな声を漏らす。
「あ、あんたは何者なんだ?」
突如現れた謎の男に警戒した男は、そんなことを聞いてきた。
謎の、と言ったがそれには理由がある。
さっき東雲と少し話したのだが、その時に狐面を貰ったのだ。
本人には「貴方目立ちたく無いんでしょう?ならこれでもつけておきなさい」と言われた。
なんでそんなものを持ってるかとても疑問に思ったが、聞く前に東雲は魔物を狩りに出かけてしまったのだ
まぁそんな事はともかく、この狐面を付けてれば俺の正体がバレることはないのでありがたく使わせてもらっている。
「…………東雲の知り合いだ」
だが、もちろん欠点はある。こんなふうに正体を聞かれるたびに俺は上手い言い訳をしなくてはならない。
「あぁ、あの人の知り合いならこんくらい強くても納得だな」
「顔を隠してるのは、俺はあくまで一般人でいたいからだ」
「なるほどな。また強い魔物が出てきたらよろしく頼むぜ」
「あぁ任せろ」
そう言って俺はその場を離れ、次の倒した方が良い魔物を探すのだった。
——————————————————
あれからさらに3時間が経った。
ダンジョンから出てくる魔物はついにAランク以上のものだけになった。
Aランクと言っても、暴走しているからそれ以上の力はあるが。
Bランク以下の冒険者は、自分たちの実力では死ぬだけだと理解したようで、すでにダンジョンから離れている。
「天神流 二の太刀
ズバババババッッ!!
Bランク以下の冒険者がいなくなったから、俺も普通に戦いに参加している。
Aランクにもなれば、気を抜いていなければ魔物にやられることはない。
例え相手がSランクの魔物だろうと、死なずにSランクの冒険者が来るまでの時間稼ぎならばできるだろう。
だから俺が強い魔物を倒していく必要がなくなった。
『ガアァァァァ!!!』
ズバッ!
だから俺はこうして普通に魔物と戦うことができるのだ。
さて、出てくる魔物もさっきより格段に減ってきたし、そろそろこのダンジョンは空になるんじゃないんだろうか。
前までの地球と同じだ。
結論、このダンジョンにいる魔物を全て倒せば幻影日を乗り越えたと言ってもいいだろう。
出てくる魔物の数もだいぶ減ったし、そろそろ終わりかな。
俺がそんなことを思った時、久しく発動していなかったスキル『危機察知』が周辺を赤く示した。
このスキルは、3秒以内に起こる危険を察知し、そこを赤で示すという効果がある。
俺が強くなってからは発動しなくなったが、このスキルのいいところは間違いがないということだ。
つまり、ここら一帯は3秒以内に危険に晒されるってことだ。
俺の周りが赤くなってないことを見るに、おそらくこのスキルは他人に発動したんだろう。
まぁだとしても危険なことには変わりない。
俺は精神を研ぎ澄ませ、危険が何なのかを探る。
すると、ダンジョンに
そのドラゴンが今まさにブレスを吐き出そうとしている。
チッ!よりによってドラゴンブレスかよ!?
俺もあれほど大きいドラゴンは異世界でも一体しか知らない。
もしそれと同等の魔物だとすれば、このブレスは俺が捌かない限りここら一帯を焼き尽くすだろう。
「天神流 秘技」
出し惜しみはしてられない。翌日の疲労がやばいからって秘技を使わなければ、おそらく周辺に被害を出さないで捌き切ることは不可能だ。
「六の陣」
俺がそう呟いた瞬間、ダンジョンから全てを飲み込まんとする程巨大なブレスが出てきた。
「
そのブレスに合わせて、俺も技を放つ。
——刹那、俺の刀は音を抜き去り光にさえも届きうる速度で鞘から抜き出された。
その刀が振り抜かれた瞬間、目前まで迫っていたブレスは切られたのか、はたまたかき消されたのかは分からないが、綺麗になくなった。
その代わりに、辺りには荒れ狂うほどの強風が巻き起こっていた。
———————————————————
ズン、ズン
ブレスを放った張本人は、歩くたびに地面が揺れるほどの巨体を動かしながらダンジョンから出てきた。
「ッッッ!?」
俺は、そのドラゴンに見覚えがあった。
漆黒の鱗に、それと同じ色の巨大な翼。爪はこの世のもの全てを切り裂きそうなほど鋭く、何よりその巨体は、有に十五メートルは超えるだろう。
「バハムート…………!!」
そいつは俺が倒した異世界最強の一角、バハムートだった。
異世界から帰ってきた最強の剣聖は、ダンジョンができた現実世界で無双する たかみそくん @takamisokun
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