最強の山生活へ
ルシフェルの特訓所ができてから数日。
気がつくと俺の周りにいる面々のレベルはずいぶんと上がっていた。
世界樹の近くに住むエルミナは勇者ミーナと魔法で対等に渡り合えるほど強力な魔力を有し、アルマは四天王たちとガチでやり合えるほどの力を有していた。
「はははっ、その程度か!?」
「くっ、この俺がそんな攻撃でやられるはずないだろ!」
今日も四天王であるグラッツと訓練をしているのだが――。
「あまり地形を変形させるなよ……」
銀色のスライムでレベルが上がったアルマだと、一撃で大穴作るほどの力を有してしまったために、ただの訓練が最終決戦さながらの周囲を焦土と化すほどの威力を有していた。
しかも相手は四天王で物理最強のグラッツ。
ただ俺の力だと止めることもできないのだから気にしても仕方ない。仕方なくここは放置することにする。
一方のリリは俺の癒やしとなってくれていた。
レベルが上がったとしても特段力が強くなったわけでもなく、何かものを怖そうとするわけでもない。
一応回復魔法の威力等は上がっているらしいのだが、そもそもここに怪我をしそうなほど力の弱い人間は俺以外にいない。
ただ俺が怪我しようものならルシフェル辺りが大騒ぎしてしまうだろうから、細心の注意を払っていた。
「マオ様? どうしたの?」
「いや、今日も平和だなぁ、と思ってな」
目の前で繰り広げられている悲惨な特訓を目にしながら遠い目をする。
「うん、平和だね」
「あーっ、マオ様、こんなところにいたんだ! エルミナさんが呼んでいますよ。来てください」
ミーナが突然俺たちのところに来て引っ張ってくる。
「な、なにがあったんだ? 何かトラブルか?」
「そ、それがあの苗木が――」
もしかして少しくらい育ったのか?
「わかった、すぐに行く」
「私も……」
◇ ◇ ◇
「な、なんだこれは!?」
ついこの間まで小さな苗木だったはずが、気がつくと他の木々と変わらないはずの大きさにまで成長していた。
「あっ、マオ様。たくさん成長したです」
エルミナが嬉しそうに笑みをこぼしている。
「どうしてこんなに成長したんだ? またルルカが何かしたのか?」
「いえ、この土地にたくさんの魔力が集まって、それがこの
「それならよかったが――」
何となくここにいる面々のことを考えるとよくない影響を与えてしまったと思えるのだが……。
「あとは私の仲間も見つかれば良いのですが……」
「仲間……?」
リリが首を傾げて聞いてくる。
「人を探すなら教会のツテを使うよ?」
「人、というより種族になってしまうのです。それにみんな以外の人族の集団は信用できないのです」
「それはエルフだから?」
ミーナの視線がエルミナの耳にいく。
隠そうとしていないのだから、当然である。
「そう……ですね」
苦虫を噛み潰したような表情を見せてくる。
それを見たミーナも苦悶の表情を浮かべていた。
エルフたちが不遇を受けていることはよくわかる。
しかし、それを打開しようにも方法がさっぱりわからない。
「もともと悪いのは私たちを襲って無理やり奴隷にした人なんです。でも――」
「それならいっそのこと人族の国を襲いますか?」
ルシフェルが表情ひとつ変えずに提案してくる。
一瞬言葉に詰まるミーナたち。
しかし、すぐにそれが冗談だとわかり、笑い出していた。
「あははっ、さすがにこれだけで国とは戦えませんよ」
「そうですね。もっともっと力をつけないとですね」
「わかりました。ではもう少し鍛えてから人の国を襲撃してエルフたちを助けることにしましょう」
「はいっ!」
いやいや、それはどう見ても悪事になるのだが、勇者が頷いて良いのか?
そもそも平和を望んでる俺を巻き込むな!
そんな俺の希望とは裏腹に更なる問題へと突っ込んでいくことになるのだった――。
―――――――――――――――――――――――――――――
これにて第一部が終了となります。
【新作を始めました】
いつもと同じコメディ系異世界ものになります。
ぜひ見ていただけるとありがたいです。
タイトル
『かませ領主に転生したので原作前に黒幕倒してみる』
URL
最弱魔王に転生したから身分隠して引きこもる 空野進 @ikadamo
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